日本の雇用における特徴のひとつ「終身雇用制度」により、これまでは「1つの会社で正社員として定年まで働く」という形が一般的でした。しかし最近では、女性の就業率アップやグローバル化、IT化などの影響で、働き方にも多様性という考え方が広がり、正社員以外の働き方も増えてきました。

一方、フリーランスなど正社員以外の働き方から正社員に戻る人も増えています。大きな要因としては、正社員以外の場合、収入などが正社員に比べて恵まれていないこと、安定性も乏しいことが挙げられます。正社員のメリットデメリットを理解した上で正社員に戻りたい方へ向けて、効果的な対策を解説します。

この記事でわかること

  • 「正社員」は法律上定義されている言葉ではない
  • 正社員は会社の直接雇用、無期限雇用、フルタイム勤務の条件を満たしていることが多い
  • 正社員のメリットは雇用・収入が安定している、責任・やりがいがある、社会的信用力が高い、などである
  • 正社員のデメリットは業務内容を選べない、転勤・異動がある、などである
  • 正社員に戻るためには自己分析、企業研究を行い、中長期的なキャリアプランを設計する

目次

  1. 正社員とは
    1. 正社員の定義
    2. 働き方の種類
  2. 正社員の特徴
    1. 正社員のメリット
    2. 正社員のデメリット
    3. 正社員が合う人
    4. 正社員以外が合う人
  3. 正社員に戻るためにすること
    1. 自分のキャリア・スキルをまとめる
    2. 企業研究を行う
    3. 中長期的な将来設計をする

正社員とは

正社員の定義

「正社員」という言葉を日常的に使用していますが、法律上定義されている言葉ではありません。一般的には、次の要件を満たす場合に使用されることが多いです。

  • 会社の直接雇用
  • 無期限雇用(雇用期間の定めなし)
  • フルタイム勤務(会社の所定労働時間)

統計上では「正社員」を「事務所が正社員・正職員として扱う者」と定義しています。

雇用の形態として正社員は「正規雇用」と呼ばれ、正社員以外のパートタイム、アルバイト、派遣社員、契約社員などは「非正規雇用」と呼ばれます。企業に雇用される際には大きく分けてこれら正規雇用と非正規雇用があり、企業に雇用されず仕事を行う場合はフリーランス、自営業、会社経営などがあります。

まずは正社員とそれ以外の働き方の特徴と、自分に合った働き方は何かを理解した上で、正社員として働くためのポイントを押さえていきましょう。

働き方の種類

働き方は雇用されるか、雇用されないかに分けることができます。雇用されない働き方とは、フリーランス、自営業、会社経営などです。雇用される場合、正社員以外にも契約社員、パート・アルバイト、派遣社員とさまざまな形態があります。それぞれの働き方の特徴を整理します。

正社員の特徴

働き方の種類によって特徴があり、メリットとデメリットがあります。正社員にも多くのメリットとデメリットがあります。

正社員のメリット

・雇用期間の定めがない

正社員の雇用期間は原則無期限であり、雇用期間の定めがないため長期的継続的に働くことが保障されています。そのため、正社員は長期的なキャリアプランやライフプランを設計しやすいです。

・収入が安定している

正社員は月給制のことが多く、賞与がある企業も多いです。正社員は定期的に考課・査定があり、その内容が昇進や昇給に反映されます。終身雇用制度が根強い日本では、年々収入が増える場合が多く、契約内容によって業務と給与が決まっている契約社員と比較すると、この点が大きな違いになります。

・福利厚生が充実している

正社員は厚生年金、企業によっては確定給付企業年金、企業型確定拠出年金などの企業年金に加入できます。正社員のみを住宅手当、家族手当といった各種手当の対象としている企業も多くあります。また、退職金制度も、一般的には適用対象を正社員として、契約社員には適用しない場合が多いです。

・やりがいがある

企業の中核として働く正社員は、プロジェクトのリーダーになる、役職が付くなど責任を伴う仕事を任されるようになります。継続的な業務や大きな案件を取り扱うことでやりがいや成長を感じることができます。

・スキルアップ、資格取得、キャリアアップできる

正社員に対して研修制度や資格取得支援制度を設けている会社も多いです。組織的に人材を育てたり、業務に役立つ資格の取得を推奨したりする必要があるためです。同じ会社で経験を積むことで中長期的なキャリアプランを設計し、キャリアアップすることも可能です。

・社会的信用がある

正社員として働くことができる人、ということで正社員は社会的信用を得やすいです。雇用期間が無期限で収入が安定しているため金融機関からの信用度が高く、住宅ローンをはじめとする各種ローンやクレジットカードの審査に通りやすいです。

正社員のデメリット

・業務内容を自分で選べない

正社員は企業の配置命令に従う必要があります。そのため本人の希望とは異なる部署への配置や、業務内容となることもあります。経理部希望の人が営業部へ配置される場合など、本人の希望や特性と大きく違う場合もあります。

・転勤・異動がある

正社員は業務内容を選べないことに加え、企業から異動や転勤を命じられるケースもあります。正当な理由がないかぎり、企業からの異動や転勤命令を拒めません。最近は、地元志向の人が増えていることもあり、働く場所の範囲を限定する「地域限定正社員」を選択する人も増えています。

・責任がある業務の場合、プレッシャーがある

正社員は責任のある業務を任されることが多く、やりがいやスキルアップに繋がる一方で、責任の大きさがプレッシャーとなり精神的に辛くなる場合があります。

・副業できない場合がある

副業禁止としている会社があります。近年は国の推奨もあり、副業を認める企業も増えてきましたが、規則として禁止している会社の場合、副業はできないので注意が必要です。

正社員としての働き方にはこのようなメリット、デメリットがあります。それぞれのキャリアプラン、ライフプランによっても適した働き方は変わってくるため、自分にとってはメリットでも、他の人にとってはデメリットということもあるでしょう。正社員のメリット、デメリットを理解した上で、正社員が合う人、正社員以外の働き方が合う人について紹介します。

正社員が合う人

・安定を求める人

正社員は原則、無期限雇用のため雇用が安定しており、収入も安定しています。お金や生活の心配をせずに過ごせる安心感を求める人に向いています。

・環境を変えず頑張りたい人

正社員は転勤や異動もありますが会社自体は変わらないため、派遣社員や契約社員に比べて同じ職場、同じ業務内容で働き続けることが多いです。職場の人間関係や取引先などとの繋がりなどを継続できます。

・スキルアップ、キャリアアップをしたい人

長期間働くことが前提の正社員は、業務に必要な知識や経験の習得が求められることも多く、そのための研修なども用意されています。責任や裁量の大きな仕事をすることが増えれば増えるほど、スキルアップやキャリアアップの機会も増えるでしょう。

・キャリアプランが定まっていない人

希望する業種、職種が特にないという場合、一旦正社員として勤務すること自体がその後のキャリアプランにとってプラスになります。配属された部署で担当の業務を行うことで、自分のしたいこと、自分に合ったものが見つかる場合もあります。業務内容が自分で選べないからこそ経験の幅が広がるのも、正社員の良い点です。仮に、その会社が合わない、ステップアップしたいということで転職する際にも、正社員として働いた実績はプラスに評価されることが多いです。

正社員以外が合う人

・勤務地・勤務時間を固定したい人

正社員は全国転勤、フルタイム勤務などが条件となっている場合があります。ライフスタイル、ライフステージにより、特定の地域で働きたい、勤務時間は9時から5時ではなく一日に数時間働きたい、といった場合は正社員以外の働き方のほうが採用されやすいです。

・やりたい仕事が明確な人

正社員は職種を限定せずに採用される場合が多いため、希望部署へ配置される、希望の業務に従事できるとは限りません。例えばwebデザイナーとして採用された後、営業職に変更となる場合もあります。

・会社のルール、慣習が苦手な人

正社員に限らず、雇用された被雇用者は、会社の規則を遵守する必要があります。また、正社員の場合は長く働いているうちに、同調圧力やしがらみなどを感じる場面もあるかもしれません。自分の考えと合わない社風や雰囲気の会社であれば、正社員として働くよりは、契約社員や派遣社員として契約内容の業務のみを行うほうが、働きやすい場合もあります。

正社員に戻るためにすること

正社員の解雇は法的に厳しく、合理的な理由と適切な手続きが必要なこともあり、企業側は正社員の採用に慎重です。また、企業は採用の際に、人材育成の面からは長期間勤務できる若い層を、費用の面からは契約社員、派遣社員を採用するほうがメリットが大きいと判断する傾向もあります。そのため、一般的に40代、50代と年齢が上がるにつれて、正社員としての採用は難しくなるとされています。正社員として採用をめざすなら、しっかりとした対策を講じて臨みましょう。

自分のキャリア・スキルをまとめる

正社員として求職する前に、まずはしっかりと自己分析を行います。そして、キャリアやスキルの棚卸しをして見つけた自分の強みを、最大限にアピールすることが大切です。専門のスキル以外にも、正社員以外で働いていた経験や仕事以外のさまざまな経験は、どの会社でも活かせる「ポータブルスキル」となります。

企業研究を行う

正社員で採用されるためには、社会の流れを把握することや、企業のニーズをくみ取ることが必要です。大手企業に正社員として雇われることは中小企業より難しいとされるように、会社の規模、業界によって求人倍率は違います。人手不足の業界や求人数の多い業界、職種を候補に入れることで採用されやすくなるでしょう。

中長期的な将来設計をする

自己分析や企業分析に加えて、さまざまな採用方法を理解し、活用することも大事です。

  • 知人の紹介、エージェント利用などで企業との接点を増やす
  • 紹介予定派遣のように一旦、正社員以外で採用されてから正社員登用を目指す
  • 限定正社員制度などのように正社員という立場であっても一部条件を限定にする

こういった方法を柔軟に取り入れることで選択肢が広がります。

・エージェントを利用する

採用は常に変動する「需要」と「供給」のバランスにより決まります。転職サイトで自分のスキルや経験に合う求人の内容、条件を知ることで現在の自分の状況を把握できます。転職エージェントに登録すると得られるキャリアアドバイザーからのカウンセリング結果や、提示される求人情報、オファーの内容によって、客観的に自分の市場価値や強みを把握することができます。結果的に、転職エージェント経由で再就職しなかったとしても、自分の市場価値を知ることができる点で有用なツールとなるため、これらを上手に活用しましょう。

・家族・知人の紹介を利用する

昔からある方法ですが、縁故採用や知人の紹介による採用は現在も行われています。紹介者のお墨付きということでお互いに信頼性が担保されます。ただし本人のスキルや経験が伴っていない場合、ミスマッチになる可能性がある点に注意が必要です。

・リファラル採用

最近注目されている採用方法です。縁故採用のように知人・友人を自分の勤める会社に紹介する方法ですが、縁故採用とは異なり、紹介された候補者は通常の選考過程をたどります。採用された場合、通常の選考フローを経ているため双方ミスマッチが少ない点にメリットがありますが、採用に至らない場合、紹介者が気まずくなる場合もあります。

・紹介予定派遣

一定期間(最長6ヶ月以内)派遣社員として働いた後、企業と本人の希望が合えば直接雇用に切り替える方法です。直接雇用となる前に、求職者は業務内容や職場の雰囲気を確かめることができ、企業側も求職者のスキルや勤務態度を確認できるという利点があります。この方法で正社員登用を目指す場合は、継続して働いてほしいと判断されるような勤務態度が必要です。

・限定正社員制度

「勤務地」「勤務時間」「業務内容」等の条件を限定した正社員の制度を設ける会社が増えてきています。一般的に正社員の特徴は「無期雇用、転勤異動あり、職種限定なし、フルタイム勤務、昇給昇格・賞与・退職金あり、会社の福利厚生あり」です。これらはメリットでもありますが、最近は育児、介護などをきっかけとした働き方の多様化が広まっており、条件を限定して自分の希望する範囲内で働きたいという人も増えています。現在の人手不足の状況から、条件の限定はあっても優秀な人材であれば確保して定着してほしいという企業側の要望もあり、今後さらに需要が見込まれる制度です。

年齢を重ねるごとに正社員として採用されることが難しくなりますが、同じ業務内容や条件で働くのであれば、退職金制度や福利厚生などの恩恵を受けられる正社員を目指すことを視野に入れてみてはいかがでしょうか。人材不足の問題や、今後、年金支給年齢や定年年齢の引き上げが検討されているという点からも、高齢者ができるだけ長く働く社会となっていく可能性が高いです。定年が65歳や70歳の場合、45歳で正社員として働きだしたとしても20年以上働くという計算になります。年齢にとらわれず、正社員として長く働くことを選択肢のひとつに入れて前向きに挑戦してみませんか。