
妊娠・出産、家業の手伝いなど、さまざまな環境の変化に向き合いながらも、「自分の活躍できる場所を見つけたい」と考える方は少なくありません。今回は、パソコン1台から始め、今では講師としても活躍する堀優布さんに、在宅ワークでキャリアを築きたい人へのアドバイスをうかがいました。
妊娠と退職をきっかけに見つけた「自分の力で働く」道
━━現在、どのような仕事をされているのか教えてください。
在宅ワークで、事務代行のほかWebサイトやチラシの制作を行っています。最近は、イベントの写真撮影に携わる機会も増えてきました。また、東京にある2社と業務委託契約を結び、それぞれの企業をサポートしています。NPO法人が運営する「テレワーカー養成講座」では、基礎講座の講師や実践講座のアシスタントも務めています。

━━幅広く活動されていますが、その中でメインの仕事は何ですか。
企業のサポート業務です。
1社では、イベントの企画や社長からの依頼業務などを担当しています。
もう1社では、物件の管理運営を任されており、レンタルスペースの貸し出しや利用者対応などを行っています。
このレンタルスペースは、地域の方が集うコミュニティーの場にもなっていて、立ち寄ってくださる地元の方とお話ししたり、パソコンやスマホの操作・不具合に関する相談に応じることもあります。
さらに、この物件の管理会社がヨットのセイル(帆)のアップサイクル事業に取り組んでいるため、その一環としてセイルのカット作業などもお手伝いしています。
━━在宅ワークを始めたのはいつ頃ですか。また、始めたきっかけを教えてください。
在宅ワークを始めたのは2018年です。
当時は派遣社員として働いていましたが、産休や育休の対象ではなかったため、妊娠をきっかけに退職することになりました。
出産後は、主人の実家に同居をすることになり、嫁ぎ先は自営業で農業もしていたので、「いろいろ手伝ってね」と言われていたこともあり、「もう外で働くのは難しいかも」と感じていました。
それでも、家の手伝いをしながら、自分の力でできる仕事を見つけたい、自分で収入を得たいという思いがありました。
そんなとき、大分県が支援している「自営型在宅ワーカー養成講座」のチラシを見つけて受講し、在宅ワークを始めてみようと思ったんです。
━━在宅ワークをするために身につけたスキルや知識、資格などはありますか。
資格は特に持っていませんが、スキルアップのためにセミナーを受講しています。AIやCanvaの使い方、動画制作、キヤノンのカメラ教室などに行きました。なるべく費用を抑えたいので、無料のセミナーを受けたり、YouTubeを観たり、AIを利用して調べながら実際に試して覚えていくということが多いです。

在宅ワークで広がった地域とのつながりと仕事のやりがい
━━在宅ワークを始めてから、派遣で働いていた頃と比べて、どんな変化がありましたか?
自分のペースで働けるようになり、時間の使い方が大きく変わりました。心の余裕もでき、仕事へのやりがいも感じられるようになりました。
━━時間にも精神面にもゆとりができたのですね。そんな中で感じられた仕事のやりがいについて教えていただけますか。
業務委託の仕事では、直接クライアントの方とやり取りをしながら進める場面が多く、さまざまな意見を交わしながら形にしていけることにやりがいを感じています。良い提案ができたときには喜んでいただけますし、そうでない場合は、自分の伝え方や視点を見直して次に活かすようにしています。
自分で業務を管理するようになってからは、「よりお客様に喜んでいただくにはどうしたらいいか」を常に考えるようになりました。ご依頼をいただいた際には、求められていること以上の提案を意識したり、質問にすぐ答えられるよう事前に準備をしたりと、日々の仕事の中で少しずつ知識を深めています。自分の努力が紹介の増加や収入アップにもつながっていくので、その成果を実感できることが大きな励みになっています。
また、在宅ワーカー養成講座を受講したことをきっかけに、私の働き方も生活も大きく変わりました。外で働いてキャリアアップを目指すことももちろん素敵ですが、外で働いているために子どもとの時間が思うように取れず、働き方を見直したいと感じる方も少なくありません。そうした方が、もっと自分らしい働き方を選べるよう力になりたいという思いから、この街を“テレワークの街”として盛り上げていきたいという気持ちが、私の原動力になっています。

━━反対に大変な面は何でしょうか。
以前は、自分ができないところは周りにサポートしてもらえていましたが、今はすべて自分の責任でやり遂げなければならないところです。体調がすぐれなかったり、子どものことで思うように作業が進まなかったりしても、別の日や夜中に作業して、期日までには必ず仕上げるようにしています。でも、大変なこともありますが、その分、できたときの達成感は大きく自分の成長を感じられます。
━━派遣で働いていた頃と比べて、収入面はいかがですか。
安定性でいえば派遣での収入のほうがよかったです。ただ、今はストレスが少なく、通勤時間がないことや子どものために時間を使えることなどを考えると、トータルでは大きな差はないと思います。
今は頑張っただけ収入が増え、いろいろな人から仕事を頼まれるようにもなってきています。
━━現在の収入になるまでにはどんな過程を踏んできましたか。
最初は月に6,000円ほどからのスタートでした。作業を効率的にこなせるようになってから徐々に増えていきました。途中、主人の仕事を手伝いながらパート勤めをしていた時期もありますが、2025年からは在宅ワーク1本に絞っています。業務委託契約ができたことが大きいです。現在は月に4、5件ほどのお仕事を担当し、安定して働けるようになりました。
一歩を踏み出し、続けてきたからこそ広がったキャリア
━━1日のスケジュールを教えてください。
朝は3時~4時頃に起きてチラシのデザインや、やり残した仕事を片づけます。5時頃からお弁当作りを始め、家族の朝の支度を済ませて、8時半頃に全員を送り出します。その後、依頼された仕事に取りかかり、16時から17時ぐらいまで作業をします。
夕方は子どもを迎えに行き、夕食の準備などをして、21時頃に子どもを寝かせます。そのまま一緒に休む日もありますが、オンラインで仕事の打ち合わせをすることもあります。
在宅ワークは時間の管理が大変ですが、その分、家族との時間を大切にしながら働けるのが在宅ならではの良さです。

━━最後になりますが、在宅ワークで働きたいと考えている人にアドバイスをお願いできますか。
私は地方に住んでいますが、外で働こうとしたときになかなか働き口が見つからず苦労しました。その経験から、在宅ワークは地方こそ必要のある働き方ではないかと感じています。都会のように時給が高くない地域も多いので、もう少し収入を増やしたいという方は多いと思います。在宅ワークであれば、東京など都市部のお仕事を地方にいながら担当できることもあり、場所にとらわれず働けるのが大きな魅力です。
ただし、始める際には情報の見極めがとても大切です。「資格がなくても短期間で高収入が得られる」といった話をみかけることもありますが、実際にはそんなに簡単ではありません。特別なスキルや経験がある場合を除き、やはりコツコツと学び続ける姿勢が一番の近道だと思います。安易に飛びつかず、内容をよく確認して自分が安心して続けられる仕事を選ぶことが、自分を守ることにもなります。
私自身、在宅ワークを通じて働き方の自由さや楽しさを実感しています。資格は運転免許証しか持っていませんが、続けてきたことで少しずつお仕事が増え、収入アップにもつながりました。大切なのは「待つ姿勢」ではなく、「これを学んでみよう」と一歩を踏み出すこと。そして、「いつから始めるか」を自分で決めることです。
最初は、在宅ワークのサポート体制が整った企業で経験を積むと安心できます。続けていくことで、働き方の選択肢は確実に広がっていくと思います。私も在宅ワークを続ける中でご縁が広がり、テレワーク講座の講師というお仕事にもつながっていきました。
自分のペースで前に進めば、きっと道は開けていくと感じています。
