働き方に迷いを感じたとき、「このままでいいのかな」とふと立ち止まることがあります。そんなときに大切なのは、少しでも「やってみよう」と動いてみることです。今回は、環境の変化をきっかけに在宅ワークを始め、学びや悩み、挑戦を重ねながら、動画クリエイターとして自分の新しい可能性を見つけていったhirominさんにお話をうかがいました。

環境の変化が導いた、“在宅で働く”という新しい道

━━さまざまな在宅ワークをされてきたとのことですが、現在のお仕事を教えてください。

メインの仕事は動画制作です。企業さまや個人の方からご依頼をいただき、PR動画やYouTubeのコンテンツなどを制作しています。
また、在宅ワークのマネージャーとして、クライアントさまとの打ち合わせやワーカーさんへの依頼内容をまとめた仕様書の作成、進捗管理なども担当しています。

━━前職はどんな仕事をされていたのでしょうか。

臨床工学技士の資格を持ち、病院で内視鏡機器を中心に検査の立会いや医療機器の管理・保守点検をしていました。

━━今は、まったく違う分野の仕事ですね。動画制作や在宅ワークのマネージャーの仕事を始めたきっかけを教えてください。

東日本大震災で被災し、当時勤めていた病院に通えなくなったため退職しました。
その後、ハローワークで紹介された在宅ワークセミナーに参加し、在宅での仕事を始めたんです。特別なスキルはなかったのですが、仕事が楽しくて、気づけば10年が経っていました。

長くお世話になっていた会社では在宅ワーカーさんのマネージャーを任せていただくようになり、やりがいも感じていましたが、あるときふと、「このままでいいのかな。この仕事がなくなったらどうしよう」と不安がよぎったんです。
主人は転勤が多く、病院で働くのは難しいと思い、他社の在宅ワークにも取り組んでみたのですが、思うように結果が出せませんでした。

「私はスキルもないし、何もできないのかもしれない」と落ち込み、働く意味を見失いかけていたとき、当時のマネージャーから「動画を作れる人を探しているんだけど、できる?」と声をかけていただいたんです。
「勉強してできるようになれば、もっとお役に立てるかもしれない」と思い、オンライン講座で少しずつ動画の勉強を始めました。

━━在宅ワークの中で、ステップアップされていったのですね。動画制作についてもう少し詳しく教えてください。どのような講座で学ばれたのでしょうか? 

Adobeの動画編集ソフトを中心に基礎を学びました。そのほか、動画マニュアルやプロモーション動画の制作に生かせる実践的な講座を受けたり、ブログやYouTubeから情報を集めたりしました。最近はNoteの記事を読んだり、AIに質問して学ぶことも多いです。
現在は「AIクリエイター」として活躍できるよう勉強を続けていて、AIを取り入れて動画制作や企業の課題解決に生かせたらと考えています。AI関連の講座を受講し、「生成AIパスポート」の資格も取得しました。

動画制作の仕事に必須の資格はありませんが、スキルの証明や知識の幅を広げるために、これまで有料・無料合わせて十数講座を受講しています。

スキルゼロからの挑戦。自分を変えると決めた覚悟

━━本格的に動画制作を仕事にしようと思ったのはどのタイミングですか。

オンデマンドの講座を受け始めて、1カ月ほど経った頃から、テロップ(字幕)を入れる動画の仕事を始めました。先生に、毎日さわってソフトに慣れるようにと言われていたので、なるべく簡単でほぼ毎日納品がある仕事を始めたんです。でも、それではきっかけをくださった会社に「動画制作ができます」と自信を持って言い出せませんでした。
受けていた仕事に追われ、このままでは何も変わらないと感じ、本腰を入れて動画クリエイターになろうと決めたのです。

それで、思い切って一年間お仕事をお休みさせていただきました。動画ができないからと、また以前の仕事に甘えてしまうかもしれないと思い、今まで十数年見続けてきた会社のホームページを開かないと決めました。もし見てしまったら、きっと戻りたくなってしまう気がしたんです。私にとっては、それが大きな覚悟でした。特別なスキルもなかった自分を少し見返してやりたいという気持ちもあって、恥ずかしいですが、ちょっと輝いてみたかったんです。

これまで仕事をしていた時間をすべて動画制作に注ぎ、案件に応募していろいろなジャンルの動画を作りました。企業案件を取れるレベルになれるよう、試行錯誤の毎日でした。そんな中で、ご縁があって企業案件をいただくことができ、7カ月で復帰することができました。

━━大きな覚悟を持って臨まれたんですね。在宅で動画制作を始めてから、勤務していた頃と比べて一番変わったことは何でしょうか。

外で働いていた頃は、毎日さまざまな人と顔を合わせ、いろいろな場所へ出かける機会も多く、自然と気持ちが明るくなっていたんです。

在宅ワークを始めたばかりの頃は、家にこもって作業する日が続き、外への興味が薄れて気持ちも沈みがちでした。でも、動画を始めてからは、気持ちがずいぶん変わりましたね。

動画は、誰かに見て楽しんでもらったり、学んでもらったり、何かを感じてもらうものなんですよね。依頼してくださった方と細かい話をして、「どう見せればどんな人に響くのか」「どんな場所で見てもらえば効果的なのか」を意識するようになりました。それからは、より良い表現づくりのために外に出て人と関わったり、情報を集めたり、自分の感覚を磨いたりするようになりました。

以前のように環境が人との出会いをくれるのではなく、自分からつながりを作るようになったことが、在宅で働く私にとって一番大きな変化だと思います。

━━動画制作と在宅ワークのマネージャー職は、どれくらいの割合で仕事をされていますか。また、何年ぐらい続けていらっしゃいますか。

今は動画制作の仕事を少し減らしていて、全体の割合は半々くらいです。動画制作は5年目、マネージャーの仕事は8年ほどになります。

在宅でも世界は広がる。学びはいつからでも遅くはない

━━それぞれの仕事のやりがいと大変な点を教えてください。

動画制作のやりがいは、お客様の求めているものと自分の表現をどう結びつけるかを考えながら、一つの作品に仕上げていく過程です。追求している時間がとても楽しいですね。

マネージャー職では、在宅という環境の中でもワーカーさんと協力しながら仕事を進められるのがうれしいです。自分にはできない作業を丁寧に仕上げてくれたときには本当に感心しますし、メールやチャットでのやり取りを通して、人とのつながりを感じられる瞬間がとても好きです。

動画制作で大変なのは、常に新しいトレンドや技術に触れ、時代の流れに合わせて表現を磨き続ける必要があることです。AIの進化が著しいので、人にしかできない提案力や表現力がますます大切だと感じています。クライアントさまと打ち合わせを重ねたり、ワーカーさんに仕事を依頼して全体をまとめたりと、調整に苦労することもあります。

マネージャー職では、ワーカーさんと連絡がスムーズに取れないときに、その後の対応を考えるのが大変だったりします。

でも、その経験が動画制作の進行管理にも役立っていて、「苦労もちゃんと次につながっているな」と感じています。

━━前職と比べて収入はどれくらい違いますか。

動画制作とマネージャー職を合わせた今の収入は、前職の頃よりも多くなりました。

動画制作に関して言えば、始めた頃は月2万円ほどでしたが、半年後には6万円、案件によっては60万円に届くこともありました。

現在は固定の仕事を3件担当しており、月の目標収入を維持できるよう、減少した際には単発案件を受けて補うようにしています。

━━1日のスケジュールを教えてください。

朝6時に起きて家事を済ませ、8時半には制作をスタートします。9時半から10時までにスケジュールを確認したあと仕事を再開し、12時から14時頃に昼食をとります。

午後は18時頃までマネージャー業務を中心に進め、その合間にオンデマンド講座や参考のための動画を見ています。

18時から家事をして、19時半頃に再び仕事に戻ります。主人と21時頃に夕食をとり、少し作業をして23時には眠るようにしています。

在宅ワークの良さは、時間の合間を自由に使えることです。おやつを楽しんだり、ドラマを観たりして気持ちをリセットする時間も大切にしています。

ドラマは動画制作の参考にもなりますし、「涙活」や「笑うこと」を通して、自分の感情を揺らす2時間を作るようにしています。どんな作品に心を動かされるのかを感じることが、制作にもつながっています。

━━最後に、動画制作の仕事に携わるためのアドバイスをお願いします。特に40代、50代の方が働き方や仕事を変えたいと思った場合にどうすればよいのか、ヒントをいただけますか。

私は40代後半になるまで、動画制作にはまったく興味がなかったんです。でも、きっかけをいただいて、「ちょっとやってみようかな」と思ったことが始まりでした。

年齢を理由にためらうのは、もったいないと思います。私も最初は「この年齢で新しいことを始めるのは無理だろうな」と思っていたのですが、片手間のつもりが、気づけば夢中になっていました。

今は、誰でも気軽に始められる時代です。少しでも興味があれば、できるだけ早く動いてみてください。動画制作をきっかけに、さまざまな仕事を知ることもできます。私のまわりでも、動画からスタートしてデザインや音声配信など、別の道に進んだ人がいます。

いろいろ試しながら、自分にできることを探していくといいと思います。何か見つかったら、悔いのないように取り組んでほしいです。

私自身、今は動画クリエイターとして活動していますが、この先は別のことをしているかもしれません。

今はAIの勉強も楽しいです。

そんなふうに、自分探しの旅を続けていくのもいいのではないかと思っています。