
新しい分野への挑戦やスキルアップで「自分らしい働き方」を叶えたい。そう考える人が増えています。しかし、本格的な資格取得や学び直しには費用の負担が伴うもの。そこで活用したいのが「教育訓練給付金」です。
手続きも電子申請ができる上、2024年10月の法改正では、給付率が引き上げられました。ますます利用しやすくなっています。
この記事でわかること
- 支給率や上限額が引き上げられ、最大で受講費用の80%まで給付が受けられる
- パートや契約社員の方、すでに退職した方や60代の方でも利用できる可能性がある
- 教育訓練を受けるための休暇中の生活を支える「教育訓練休暇給付金」が新設された
- 教育訓練を受講すると「給付制限」が解除されるようになった
リスキリングに役立つ教育訓練給付金。2024年、2025年には関連制度の改正が多く行われました。これらの最新情報をもとに、受け取るための条件や給付金ごとの特徴など、「学びたい時」に役立つ内容を解説します。また、転職を考える際に知っておくと安心な、求職者給付(失業保険)との関連や、費用を抑えて学べる「ハロートレーニング」といった関連制度についてもあわせて紹介します。
目次
- 最大80%に拡充!教育訓練給付金の種類と給付額シミュレーション
- 教育訓練給付金には3つの種類がある
- 講座数が豊富!「一般教育訓練」
- 速やかな再就職を目指す「特定一般教育訓練」
- 給付率が最大「専門実践教育訓練」
- 教育訓練給付金を受け取れる人は?パートや退職後も対象になる可能性あり
- 雇用保険の加入期間が受給のカギ
- 過去に受給したことがある場合は注意
- 退職後でも1年以内に受講開始すれば申請可能
- 定年後世代でも条件を満たせば利用できる
- 申請はオンラインでも可能に!手続きの変更点や新設の教育訓練休暇給付金
- 電子申請や郵送が可能に
- 休暇中の生活を支える「教育訓練休暇給付金」
- 転職を考えるなら知っておきたい「給付制限解除」や関連制度
- 教育訓練を受講すると「給付制限」が解除されるように
- さらに費用を抑えて学べる「ハロートレーニング」
- 専門実践訓練期間中の収入保障「教育訓練支援給付金」
- 「やりたい」と思ったらまずは確認!受講までのステップ
- 厚生労働省の検索システムで講座を探す
- ハローワークで「支給要件」と詳しい手続きの方法を確認
- 賢く制度を利用して理想のキャリアへ
最大80%に拡充!教育訓練給付金の種類と給付額シミュレーション
教育訓練給付金には3つの種類がある
教育訓練給付金とは、働く人のスキルアップやキャリアチェンジを支援するために、国が教育訓練経費の一部を負担してくれる制度です。
教育訓練には「一般教育訓練」「特定一般教育訓練」「専門実践教育訓練」の3つの種類があり、それぞれ給付金の対象となる講座や支給率・上限額が異なります。2024年10月の改正では支給率や上限額が引き上げられ、最大で受講費用の80%まで給付を受けられるようになりました。
3種類の給付内容は以下の表のとおりです。

それぞれの教育訓練の特徴を見ていきましょう。
講座数が豊富!「一般教育訓練」
一般教育訓練の特徴は、最も講座数が多く、少ない手続きで利用できることです。

簿記検定、ITパスポートなど、比較的短期間で取得できる資格などが対象となっています。給付率は受講費用の20%で、上限額は10万円です。
たとえば、受講費用が8万円の簿記2級講座を受講した場合、修了後に1万6,000円が給付されます。受講費用が60万円の講座であれば、上限の10万円が支給されます。事前の手続きは不要で、講座修了後にハローワークへ申請するだけで利用できる手軽さが魅力です。
速やかな再就職を目指す「特定一般教育訓練」
特定一般教育訓練は、再就職やキャリアアップに特に効果が高いとされる資格や講座が対象です。日本語教員養成講座、大型自動車免許などが該当します。
給付率は受講費用の40%(上限20万円)です。また、2024年10月からは、条件を満たせば追加の給付が受けられることになりました。訓練修了から1年以内に資格取得や就職をした場合、追加で受講費用の10%(上限5万円)が受けられます。はじめの給付と合わせると受講費用の50%(上限25万円)が給付されることになります。
受講費用40万円の大型自動車(第一種)運転免許取得コースを受講したケースを見てみましょう。物流業界の人手不足を背景に採用ニーズが高く、女性の入職も増えているトラックドライバーとなるのに必要な資格です。
まず、修了後に受講費用40万円の40%にあたる16万円が給付されます。その後、資格取得や就職ができた時は追加で4万円が支給され、給付額は合計20万円となります。一般教育訓練と比べて給付率が高いため、対象資格を目指す方にとっては大きなメリットとなります。
この給付を利用する場合は、受講開始前に訓練前キャリアコンサルティングを受け、ジョブ・カードを作成しなければなりません。また、訓練開始の2週間前までに開始前の手続きを行う必要があります。
給付率が最大「専門実践教育訓練」
専門実践教育訓練は、3つの中で最も給付率が高く、本格的なキャリアチェンジを考える方に適しています。社会福祉士、キャリアコンサルタントなどの資格取得を目標とする講座や、専門職大学院などが対象となります。
給付率は受講費用の50%(年間上限40万円)で、6ヶ月ごとに支給されます。さらに、条件を満たすと追加給付が2種類受けられます。まず、訓練修了から1年以内に一般被保険者として資格取得や就職をした場合、受講費用の20%(年間上限16万円)。次に、資格取得した上で、訓練前後で賃金が5%以上上昇した場合に、受講費用の10%(年間上限8万円)が給付されます。
これらの給付が、訓練期間に応じて最大3年間受けられます。法令上最短4年とされている長期専門実践教育訓練の場合は最大4年間受けられることもあります。
この給付を利用する場合は、特定一般教育訓練同様、受講開始前に訓練前キャリアコンサルティングを受け、ジョブ・カードを作成しなければなりません。また、訓練開始の2週間前までに手続きを行う必要があります。
准看護士養成課程を受講した場合の給付額の一例を見てみましょう。年齢を問わず安定して働け、全国どこでも通用するため、セカンドキャリアとして根強い人気がある資格です。

この事例の場合、実質的な自己負担は35万円となり、キャリアチェンジへの大きな後押しとなります。
教育訓練給付金を受け取れる人は?パートや退職後も対象になる可能性あり
教育訓練給付金は、正社員だけが利用できる制度と思われがちですが、実はパートや契約社員の方も条件を満たせば受給できます。また、すでに退職した方や60代の方でも利用できる可能性があります。ここでは、それぞれの給付金の受給条件を詳しく見ていきましょう。
受給に必要な条件は、主に以下の2つです。
- 雇用保険の加入期間(支給要件期間)を満たしていること
- 初めて利用する方:1年以上 ※専門実践教育訓練は2年以上
- 2回目以降の方:前回の受講開始日から3年以上
- 現在「在職中」または「離職後1年以内」であること ※妊娠・出産・病気などの理由があれば、最大20年まで延長できる特例があります
具体的にどんな方が対象になるのか確認していきましょう。
雇用保険の加入期間が受給のカギ
支給要件期間とは、雇用保険に加入している期間のことです。雇用保険に加入していれば、正社員でもパートでも、働き方による違いはありません。そのため、週20時間以上働く多くのパート勤務の方も対象となります。ただし、公務員の方は原則として雇用保険の適用外となるため、この制度の対象にはなりません。雇用保険への加入状況については、給与明細を確認するか、職場へ問い合わせると安心でしょう。
なお、転職した場合でも、前の会社を辞めた日から次の会社に入るまでの空白期間が1年以内の場合は、前後の期間を通算することができます。
受給には、「支給要件期間」が原則3年以上必要です。しかし、当分の間、初めて支給を受ける場合の条件が緩和されています。専門実践教育訓練は2年以上、特定一般教育訓練と一般教育訓練は1年以上の支給要件期間があれば対象になります。
過去に受給したことがある場合は注意
教育訓練給付金制度は何度でも利用できますが、1度利用すると支給要件期間のカウントがリセットされます。そのため、2回目以降に利用する場合は「前回の受講開始日」から「今回の受講開始日」までが3年以上経過している必要があります。
さらに、「新たな受講開始日の前日から3年以内に教育訓練給付金を受けたことがある時は、教育訓練給付金は支給されない」という決まりもあります。たとえば、特定一般教育訓練を受講し、資格取得をして追加給付を受けた場合、次の受講は追加給付の決定日の翌日から3年以上経った後に開始する必要があります。事前にハローワークに確認しておくと安心です。
退職後でも1年以内に受講開始すれば申請可能
現在働いていない方でも、退職日の翌日から1年以内に受講を開始すれば教育訓練給付金を利用できます。また、妊娠・出産・育児・疾病・負傷などやむを得ない理由で、離職後すぐに受講できない場合は、ハローワークに申請することで、この「1年」という期間を最大20年まで延長できます。
たとえば、育児に専念するために退職した方は、育児が落ち着いたタイミングでの資格取得のために利用することができるわけです。ただし、18歳未満の子どもの育児が対象となる点には注意が必要です。
また、延長期間が2年を超える方は、専門実践教育訓練の「追加給付」のうち、訓練前後の賃金比較が必要な「賃金上昇分(10%)」は対象外となります。
申請可能期間や追加給付など、詳細はハローワークで確認をしましょう。
定年後世代でも条件を満たせば利用できる
教育訓練給付金には年齢の上限がなく、たとえば定年後の60代でも条件を満たせば利用できます。65歳以上の方が雇用保険に加入している場合、「高年齢被保険者」となりますが、教育訓練給付金の条件である雇用保険の加入期間には、この「高年齢被保険者」としての期間も含まれるためです。
新しい分野への挑戦や、これまでの経験を活かした資格取得など、定年後のリスキリングを後押しする制度とも言えるでしょう。定年後に社会保険労務士やキャリアコンサルタントなどの資格を取得して独立開業する方や、介護関連の資格を取得して介護業界で活躍する方も少なくありません。「今さら」と諦めることなく、新しい学びに挑戦しやすい環境が整っています。
申請はオンラインでも可能に!手続きの変更点や新設の教育訓練休暇給付金
申請がオンラインでも可能になり、仕事を休んで学び直すことを支援する新制度も誕生しました。
電子申請や郵送が可能に
以前は、病気やケガなどの「やむを得ない理由」がない限り、原則としてハローワークの窓口で手続きをする必要がありました。
しかし現在は、誰でも電子申請や郵送等での手続きが可能になりました。対象は、受給資格確認や教育訓練給付金の支給申請です。仕事や家事で忙しい私たちにとって、自宅でパソコンや郵送で手続きができるようになったことは大きなメリットです。
休暇中の生活を支える「教育訓練休暇給付金」
2025年10月、「教育訓練休暇給付金」が新設されました。在職中のまま、仕事を休んで教育訓練に専念する時に、賃金の一定割合の支給が受けられる制度です。30日以上の無給の教育訓練休暇が対象となります。給付額は、離職した場合の基本手当(失業手当と呼ばれているもの)と同じ額で、雇用保険の加入期間に応じて最大150日分を支給されます。
制度を利用するには、「教育訓練休暇の開始前に5年以上、雇用保険に加入していた期間があること」など、給付を受ける本人の条件に加えて、勤務先で教育訓練休暇制度が導入されていることが必要です。制度が始まったばかりで導入されている割合が少ないという現状があるので、利用したい時は、まず事業主や勤務先の担当者に相談してみましょう。
転職を考えるなら知っておきたい「給付制限解除」や関連制度
学び直しと共に転職を考えている方が知っておきたい内容も紹介します。
教育訓練を受講すると「給付制限」が解除されるように
自己都合で退職した場合、基本手当を受け取るには「待機期間(7日間)」と「給付制限期間(原則1ヶ月)」を経過する必要があります。
しかし、2025年4月からは、教育訓練給付の対象となる訓練の受講で、この給付制限が解除されることになりました。
離職前の1年間に受講していた場合は、待機期間の後すぐに基本手当が支給されます。また、離職後に受講を始めた場合も、その受講日から給付制限が解除されます。転職前後の学び直しが、よりスムーズになる制度変更です。

さらに費用を抑えて学べる「ハロートレーニング」
「ハロートレーニング」は、「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」の総称で、仕事を探している人を対象とした公的な職業訓練制度です。希望する仕事に就くためのスキルを原則無料で学べます。テキスト代などの実費のみで学べるため、費用を大幅に抑えられるのが大きなメリットです。取得したい資格や学びたいスキルが対象講座にあるなら、これらを利用するのも賢い選択です。
専門実践訓練期間中の収入保障「教育訓練支援給付金」
仕事を辞めて長期間訓練に専念する場合の収入の保障として、教育訓練支援給付金という制度もあります。専門実践教育訓練給付金の受給資格者のうち、さらに一定の条件を満たした方が失業状態にある場合に支給を受けられます。
支給額は、雇用保険の基本手当日額の60%です。2025年3月31日以前に受講を開始した場合は80%でしたが、引き下げられました。仕事を辞める前の給料の6割程度が支給されるイメージです。
昼間通学制の専門実践教育訓練の受講、受講開始時に45歳未満、会社役員でないなど、複数の条件があるので、受給を検討したい方は厚生労働省のWebページで詳細をご確認ください。
なお、本制度は2027年3月31日までに受講を開始した場合に限り利用できます。
「やりたい」と思ったらまずは確認!受講までのステップ
給付金を利用してスキルアップを目指すなら、まずは自分に合った講座を見つけ、自分が給付の対象かどうかを確認することから始めましょう。
厚生労働省の検索システムで講座を探す
対象となる講座は、厚生労働省のWebページ「教育訓練給付金 厚生労働大臣指定教育訓練講座 検索システム」で探せます。
資格名での検索はもちろん、自分の生活スタイルに合わせて、「通信」「eラーニング」などの条件で絞り込むことも可能です。また、その講座を受けた人の資格取得状況や就職状況などのデータを確認することもできます。
ハローワークで「支給要件」と詳しい手続きの方法を確認
受けたい講座が決まったら、自分が給付金をもらえるのか、ハローワークで「支給要件照会」を行いましょう。
直接窓口へ行くほか、オンラインでの電子申請も可能です。受講開始前に手続きが必要な場合もあるため、早めの確認が安心です。
賢く制度を利用して理想のキャリアへ
費用がネックで諦めていた資格も、この制度を使えば手が届くかもしれません。まずは興味のある講座があるか調べてみてはいかがでしょうか。賢く制度を利用して、理想のキャリアへの一歩を踏み出しましょう。