
介護業界の経験がない40代が介護福祉士になるのは難しい、と思っている人は多いようです。しかし、介護福祉士は40代だからこそ持つ人生の経験を活かせる職業です。
将来性のある介護福祉士は、介護業界が未経験の40代もチャレンジできる資格です。この記事では、40代から介護福祉士になるルートや年収、合格率など詳しく解説します。また、40代から介護福祉士になるメリットやデメリットも紹介するので、ご自身に介護福祉士がマッチしているかどうかを判断する材料として、ぜひ参考にしてみてください。
この記事でわかること
- 40代からでも介護福祉士は目指せる
- 介護福祉士の平均年収は約420万円
- 資格取得ルートは4種類、働きながらでも可能
- やりがいはあるが体力負担が大きく夜勤がある点には注意したい
介護福祉士とは
介護業界では、唯一の国家資格となる「介護福祉士」は、日常生活が困難な人を支援する仕事です。利用者だけでなく、家族との連携も必要とし、介護にかかわる相談業務や指導もおこなっています。
超高齢化社会となった日本では、いま最も需要の高い職種の一つとして注目を集めています。
他の資格との違い
介護にかかわる主な資格は5つです。

介護職員初任者研修は、旧ホームヘルパー2級と同等とされています。また、介護職員実務者研修の資格を持ち、3年以上の実務経験を経ていることが、介護福祉士の受験資格を得る方法の一つです。
介護福祉士よりも難易度の高い、ケアマネージャーや認定介護福祉士はそれぞれ、都道府県による資格と民間による資格です。そのため、介護福祉士は介護業界で唯一の国家資格となっています。
介護福祉士の仕事内容
介護福祉士の仕事は、主に5つの仕事に分けられます。

介護の専門知識を持つ介護職員が実施する身体介護や生活援助も、介護福祉士の業務です。リハビリも含めて、利用者1人ひとりに合わせたサポートをおこなっています。
また、介護に関する相談窓口となり、利用者本人だけでなく、利用者の家族からの相談に対するアドバイスもおこないます。必要となる他の施設とも連携し、利用者が孤立しないよう情報提供や就労支援も業務として対応しなければなりません。
内部の仕事として、介護主任やユニットリーダーなどをまとめ、チームが業務を安全かつ円滑に進められるよう配慮や調整もしています。
介護福祉士の職場と求人状況
介護福祉士の職場には、以下のような例が挙げられます。

日本は、1970年代から高齢化が始まり、2007年には人口の21%を65歳以上が占める超高齢化社会となりました。介護福祉士の仕事は、超高齢化社会へ突入した2007年よりも以前から関心が持たれていた職種です。
現在は、スマート介護士やレクリエーション介護士など、介護に関係する民間資格も増加しています。しかし、唯一の国家資格である介護福祉士は、需要の高い資格となっています。
そのため、介護福祉士の求人は多く、売り手市場の求人状況であると言っても過言ではありません。介護福祉士の資格を持つ求職者にとっては、多岐にわたる選択肢があります。需要の高さから、企業が資格取得を支援しているケースもあります。
介護福祉士の年収
厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護福祉士の平均給与は、月350,050円です。年収にすると420万円ほどであると考えられます。
ただし、働く施設によって給与が異なるため、目安として考えてください。介護福祉士の給与を働く施設ごとに分けると、以下のような収入です。

2023年と2024年の月収を比較すると、全ての事業所で給与額の上昇が見られます。需要増加と人手不足を背景に、介護福祉士の年収は、今後も増加が見込まれています。
介護福祉士になるには?40代から始める4つのルート
介護福祉士の資格を取得する方法を、4つのルートから選ぶことができます。
選択するルートの特徴や費用などを詳しく紹介するので、40代から介護福祉士を目指す際は、ぜひ参考にしてください。
ルート①養成施設
養成施設に入学するルートでは、以下の流れで介護福祉士を目指します。
- 介護福祉士養成施設で2年以上の修業後、卒業する
- 介護福祉士の筆記試験を受ける
- 合格すれば、介護福祉士の資格を取得できる
あらかじめ、福祉系の大学や社会福祉士養成施設、保育士養成施設などを卒業している場合は、修業期間が1年に短縮されます。
なお、介護福祉士養成施設への入学に、年齢制限はありません。費用は2年制で100~200万円、4年制になると約400万円が必要です。別途、入学金や実習費、教材費が必要となるため、事前に養成施設で確認しておくことをおすすめします。
ルート②実務経験
介護福祉士の受験資格を、3年の実務経験を経て得るルートです。独自に実務経験を積んで介護福祉士を目指すなら、以下の流れで資格取得を目指します。
- 3年(540日)以上の実務経験を積む
- 介護福祉士実務者研修または介護職員基礎研修・喀痰吸引等研修を受講する
- 介護福祉士の筆記試験を受ける
- 合格後、介護福祉士の資格を取得できる
実務経験ルートを選ぶ場合、働きながら受験資格を得られるメリットがあります。ただし、3年在籍していても、実務をおこなった就業日数が540日を下回っていると受験資格の要件を満たせません。
実際に働いた日数をカウントするため、期間としては4~5年必要になると考えておいてください。
ルート③福祉系高等学校
福祉系高等学校には年齢制限がなく、中学校を卒業していれば入学資格を満たしています。福祉系高等学校のルートを選択すると、以下の流れで介護福祉士の資格取得を目指します。
- 福祉系高等学校を卒業する
- 9ヵ月の実務経験を積む
- 介護福祉士の筆記試験を受ける
- 合格後、介護福祉士の資格を取得する
福祉系高等学校を卒業したら、必ず9ヵ月の実務経験を積む必要があるので、注意してください。
なお、福祉系高等学校の費用は、公立と私学で大きく異なります。入学金や実習費用も含め、入学を検討する際は事前に確認しておきましょう。
ルート④経済連携協定(EPA)
経済連携協定(EPA)とは、日本と特定の国との間で経済連携を強化するために結んだ協定です。EPAを利用すれば、外国籍の方も日本で介護福祉士の資格を取得できます。
ただし、2025年時点において、以下の3カ国の方が対象となっています。
- ベトナム
- フィリピン
- インドネシア
EPA介護福祉士候補者として来日後、3年以上の実務経験を積むと受験資格が与えられ、介護福祉士の資格取得を目指せるため、外国籍の方におすすめのルートです。
介護福祉士の試験難易度と合格率
介護業界で唯一の国家資格となる介護福祉士について、試験の難易度や合格率も気になるところです。
ここからは、介護福祉士の試験難易度と合格率に触れながら、解説していきます。
介護福祉士の試験難易度
介護業界のなかでは、唯一の国家資格である介護福祉士ですが、他の福祉系資格と比較すると、難易度は低めです。

なお、介護福祉士の試験は、筆記試験と実技試験です。
- 3領域から63問:人間と社会、こころとからだのしくみ、医療的ケア
- 1領域と総合問題から62問:介護、総合問題
試験問題は4つの領域に分かれていて、11科目群全ての問題で得点する必要があります。また、総得点の約60%を得ることを合格の基準としていますが、点数はその年の問題の難易度によって調整されます。そのため、試験に合格するためには、受験した試験の難易度に合わせて調整された合格点数を上回る成績が必要です。
総合問題の出題範囲は広いため、全ての分野を網羅する受験対策をしておきましょう。
介護福祉士の合格率は?
介護福祉士の試験は、例年1月に実施されています。各年度の合格率は、以下のとおりです。

近年、合格率が上がっている理由には、介護福祉士の資格を目指すルートが増えたことが挙げられます。実務者研修や試験対策などが浸透したことで、過去問を用いた受験対策が可能となっていることも、合格率上昇の理由の一つです。
直近5年間では、合格率が70~85%となっているものの、介護福祉士の資格試験は決して簡単なものではありません。出題範囲も広いことから、入念な受験対策をしておくことが大切です。
40代から介護福祉士になるメリットとデメリット
介護業界は未経験であっても、40代から介護福祉士を目指す人は少なくありません。しかし、40代から介護福祉士を目指す場合、選ぶルートによっては実務経験を積むための時間が必要です。
時間がかかっても取得して進みたい道なのか判断するためにも、受験対策に入る前に、介護福祉士になるメリットとデメリットをぜひ確認してください。
40代から介護福祉士になるメリット
40代から介護福祉士になる場合、5つのメリットがあります。
- 仕事で培った経験が活かせる
- 収入アップが期待できる
- 安定した需要で将来性がある仕事に就ける
- 再就職支援が受けられる
- やりがいのある仕事ができる
営業や管理職の経験がある40代なら、介護福祉士の仕事にマネジメントスキルやコミュニケーション能力を活かせます。また、介護福祉士に必須とも言える「相手のニーズを的確にとらえる」ことに長けていると言えるでしょう。
超高齢化社会となった日本では、今後ますます介護業界の需要は増えると見られ、介護福祉士は将来性のある仕事と言えます。介護業界未経験であっても、再就職支援で「専門実践教育訓練給付金」を活用できるため、資格取得にかかる費用のデメリットも軽減できます。
利用者と信頼関係を築くことで、感謝される喜びを直に感じられる仕事が介護福祉士です。仕事へのモチベーションにつながり、やりがいを感じやすい職種であると考えられます。
40代から介護福祉士になるデメリット
40代から介護福祉士になる場合、デメリットも存在します。介護福祉士とのミスマッチを防ぐためにも、4つのデメリットは必ず確認しておくことをおすすめします。
- 体力・精神的な負担が大きい
- 人間関係でストレスがかかりやすい
- 夜勤がある
- とくに給与水準が高いわけではない
介護や支援、相談業務やマネージメントなど、介護福祉士の業務は多岐にわたります。そのため、体力だけでなく人間関係でストレスがかかることもあり、精神的な負担も避けられません。
24時間体制が必要な介護施設に勤務すると、夜勤を含むシフトで生活環境が一変する可能性があります。40代になると、生活習慣病のリスクが高くなるため、食事や運動など体調の自己管理が一層欠かせなくなるでしょう。
ときに重労働となるケースも多々ある介護福祉士の年収は、約420万円です。また、実働時間は月平均162.5時間となっています。
国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、民間企業従業員の平均年収は460万円です。40代女性の平均年収316万円より、介護福祉士の年収は多くなっているものの、実働時間と年収で納得できるかは人それぞれです。
40代から介護福祉士を目指すなら、仕事の内容や実態だけでなく、デメリットも踏まえて検討してみてください。
まとめ
この記事では、40代から介護福祉士になる方法や年収・資格取得について紹介しました。
今後も高齢化が進むと予測されている日本において、介護福祉士は需要の高い職種です。しかし、介護福祉士になるためには、知識だけでなく実務経験も必要です。
やりがいのある仕事である一方、資格取得に時間がかかるなどデメリットがあることも事実です。40代から介護福祉士を目指すなら、介護福祉士の仕事内容や年収、メリット・デメリットを事前に確認しておくことをおすすめします。
40代だからこそ、介護福祉士がご自身にマッチしているかどうかの判断が不可欠です。ご自身にマッチしていると判断できたら、ぜひ試験に向けて資格取得を目指してみてください。