
パラレルキャリアとは、本業と並行して別のキャリアを築くことを意味し、働き方が多様になった近年、人気を集めています。
新たなキャリア戦略となるパラレルキャリアは、特にミドル世代から高い注目を浴びており、実践する人も増加傾向にあります。
この記事では、パラレルキャリアがミドル世代から注目される理由や、副業との違いをご紹介します。
ミドル世代がパラレルキャリアを始めるメリットや注意点も挙げているので、ぜひキャリア戦略に役立ててください。
目次
- パラレルキャリアとは
- パラレルキャリアとは
- 副業との違い
- パラレルキャリアが注目を浴びる理由とは
- パラレルキャリアの種類
- ベーススキルアップ型
- 自己実現充実型
- 新たなキャリア開発型
- ミドル世代におけるパラレルキャリアの実態
- パラレルキャリアや副業に取り組む人の割合
- パラレルキャリアで得られた年収
- パラレルキャリアを始めていない人の割合と理由
- パラレルキャリアで得られるメリット
- 本業とは異なるキャリアアップが可能
- 視野や人脈が広がる
- 効率良くスキルが身に付く
- 本業のモチベーションアップにつながる
- パラレルキャリアの始め方
- ボランティア活動に参加する
- 勉強会や交流会に参加する
- 趣味や特技を活かせる活動を見つける
- パラレルキャリアを始めるときの注意点
- 本業の就業規則を確認する
- 時間や収入を管理する
- 本業を疎かにしないようにする
- 確定申告の有無を確認する
- まとめ
パラレルキャリアとは
パラレルキャリアとは、本業のキャリアを活かしながら、別のキャリアを積み重ねられる活動に取り組むことです。
「収入を得る」場合には副業と同じですが、パラレルキャリアと副業には明確な違いがあります。
キャリア戦略を練るうえで、パラレルキャリアと副業の違いを知ることは、最も重要であると言っても過言ではありません。
両者について詳しくご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
パラレルキャリアとは
パラレルキャリアとは、本来の仕事を続けながら、他の仕事や活動にも取り組み、キャリアを積むことです。
オーストリアの経営学者ピーター・ドラッカーがその著書『明日を支配するもの』で提唱した考え方で「複業」と呼ばれることもあります。
本業だけでなく、他の目的を持って違う活動も取り入れることを指しています。
- スキルを磨く
- 人脈を築く
- 目的を実現する
- 社会貢献する
本業だけにとらわれることなく、経験やスキル、収入など人生を豊かにするための「もう1つの活動」がパラレルキャリアです。
ボランティア活動もパラレルキャリアの1つであり、報酬の有無に関係のない多様な活動があります。
副業との違い

副業とは、本業以外で働き収入を得ることですが、パラレルキャリアとは異なり、「増収を目的として働くこと」を指します。
本業の終業後に仕事をして収入を得る副業には、例として以下のような仕事があります。
- アルバイト
- 株式投資や投資信託
- 物販
- アフィリエイトサイトの運営
副業には、「収入」という明確な目的があるため、報酬を得られる仕事を探して働くことになります。
パラレルキャリアが注目を浴びる理由とは
パラレルキャリアが、ミドル世代だけでなく、幅広い世代から注目を浴びている理由は3つ挙げられます。
- 働き方の多様化
- 収入源のリスク分散
- 地理的な影響を受けない
2019年から始まった働き方改革などにより、近年は副業の禁止が緩和されてきています。
そのため、1つの企業に依存せず多様な収入源を増やすなど、将来の経済状況に対するリスクヘッジをすることが可能となりました。
また、コロナ禍を経てリモートワークが普及した近年、仕事の発注先が遠方であっても、パラレルキャリアで携われる場合が多くあります。
これらに加えて、ミドル世代からはスキルの発揮や新しいことへの挑戦など、パラレルキャリアは充実感を得られる働き方としても注目を集めています。
キャリア戦略を考えるミドル世代にとって、活動の幅を広げるきっかけの1つとしても人気を集めているのです。
パラレルキャリアの種類
パラレルキャリアを活用した働き方には、3つの種類があります。

ミドル世代から始めるパラレルキャリアでは、ご自身で目的を明確にしてから活動への取り組み方を考えることが大切です。
ベーススキルアップ型
ベーススキルアップ型とは、今持っているスキルや経験をさらに伸ばして、新しいチャンスを広げる働き方です。
ご自身の身を置く職場や業界、職種のなかで身に付けた強みを、最大限に活かす活動が特徴です。
例えば、会社でWebエンジニアとして働いている人が、その技術を活かして個人向けのシステムを販売するようなケースが挙げられます。
無理に新しい分野に飛び込むのではなく、得意なことを深めながらキャリアの幅を広げられることが、ベーススキルアップ型の魅力です。
自己実現充実型
自己実現充実型とは、目的や夢、情熱をもとにして、本業とは異なる分野で活動する働き方です。
自分らしく取り組めるため、やりがいや充実感を得られるという魅力があります。
例えば、平日は会社員として働きつつ、夜や週末はアーティストとして創作活動をする、ボランティア活動で老人ホームを訪問する、などがあります。
本業とは別に、自分の夢を叶える活動を求めている方には、自己実現充実型のパラレルキャリアがおすすめです。
新たなキャリア開発型
キャリア開発型とは、すでに身に付けたスキルを活かしながら、新しい分野に挑戦する働き方です。
本業だけでは経験できない事柄に携われるため、視野を広げて知識や経験を増やせるのが魅力です。
例えば、会社員として働く一方で、webライターとしてのスキルを磨き、多くの分野に携わるというパラレルキャリアがあります。
新たにスキルを磨きたい方にとって、キャリア開発型のパラレルキャリアは、自己成長につながる大きなメリットがあると言えるでしょう。
ミドル世代におけるパラレルキャリアの実態

ミドル世代では、上の図のように、さまざまな理由からパラレルキャリアを始める方が多くいます。
ここからは、エン・ジャパン株式会社が実施した「ミドル世代のパラレルキャリア/副業の実態調査」をもとにパラレルキャリアの現実をご紹介します。
パラレルキャリアへの取り組み状況や得られる年収が分かるので、ミドル世代のキャリア戦略に役立ててください。
パラレルキャリアや副業に取り組む人の割合
キャリア戦略として、パラレルキャリアが将来に役立つものなのかを判断するためには、実態を確認することも大切です。
まずは、実際にパラレルキャリアや副業に取り組んでいるミドル世代の割合をご紹介します。
30代から50代を対象にした年代別や収入別の割合を参考にしてみてください。
年代別ごとの割合

ミドル世代で、副業やパラレルキャリアに取り組んでいる人は、3~4人に1人の割合です。
一方で、パラレルキャリアに絞ってみると10人に1人程度であり、ミドル世代ではパラレルキャリアより副業を選択する人が多いようです。
なお、パラレルキャリアは40代や50代になってから始める人が多く、副業も含めると新たな収入源を求める傾向があると言えるでしょう。
これまでのキャリアを活かしたり、新たなキャリアを築き上げたりと、今後も多様な働き方を選ぶミドル世代は増えていくと考えられます。
収入別ごとの割合

収入別に注目してみると、パラレルキャリアや副業を取り入れているミドル世代は、年収が高くなるほど増加傾向にあります。
年収600万円未満では、4人に1人がパラレルキャリアや副業に携わっています。
一方で、年収1,200万円から1,500万円の場合、3人に1人が本業以外の収入源を得ていることが分かります。
新たなスキルや人脈作りが可能なパラレルキャリアは、副収入だけでなく本業にも役立つメリットがあります。
パラレルキャリアや副業で得た経験を活かせば、本業での給与収入や全体的な年収のアップも期待できると言えるでしょう。
パラレルキャリアで得られた年収

ミドル世代がパラレルキャリアで得ている年収は、10万円未満である人が30%を超えています。また、1ヵ月あたり収入額が30万円未満である人が過半数を占めています。
つまり、パラレルキャリアを始めたからといって、必ずしも本業と同程度の収入を得られるとは限らないということが分かります。
キャリア戦略のためにパラレルキャリアを選ぶなら、目的を明確にしつつ本業を疎かにしないことが大切だと言えるでしょう。
パラレルキャリアを始めていない人の割合と理由

図4で見たとおり、ミドル世代でパラレルキャリアを始めている人は、10人に1人程度です。
つまり、多くのミドル世代がパラレルキャリアを始めていないということになります。
しかし、まだ本業のみのミドル世代の80%から90%の人が、パラレルキャリアや副業に興味を持っています。
興味がある理由として、特に多いものは以下の2つです。
- 複数の収入源を確保して経済的な安定性を得るため
- 本業だけでは得られないスキルや経験を身に付けられるため
そのほか、ライフワークやセカンドキャリアの形成、起業準備のなどパラレルキャリアや副業には魅力が多いようです。
パラレルキャリアで得られるメリット
まだパラレルキャリアを始めていない人が多いミドル世代ですが、本業と両立することで数多くのメリットがあります。
興味はあるものの、パラレルキャリアへの一歩を踏み出せないミドル世代は多いため、ここではパラレルキャリアのメリットをご紹介します。
本業とは異なるキャリアアップが可能
本業とは違う場所で活動するパラレルキャリアは、本業だけでは得られないキャリアを身に付けられるというメリットがあります。
新しい視点に立ってキャリアを磨くことで、本業のキャリアアップにもつながる可能性を秘めています。
パラレルキャリアで携わった活動内容によっては、人生を豊かにする知識や経験を身に付ける機会に恵まれることもあるでしょう。
視野や人脈が広がる
パラレルキャリアを通じて、多岐にわたる業界や専門分野の人々と出会えることから、人脈が広がるというメリットがあります。また、新たなキャリア形成を模索するなかで視野が広がることは、長い人生にも役立ちます。
パラレルキャリアの経験を活かし、違う視点から本業の仕事を見据えることで、業務の幅が広がることもあるでしょう。
効率良くスキルが身に付く
異なる分野での活動は、新しいスキルを効率よく身に付けられるというメリットがあります。
多様なスキルを身に付けると、仕事に対する柔軟性が増し、本業だけでなくパラレルキャリアにおける業務の幅も拡大します。
特に、パラレルキャリアは自分で活動する場所を探すため、コミュニケーションスキルが自然と身に付きやすいことが特徴です。
また、さまざまな活動を自分でマネジメントする必要があり、そこで得たマネジメントスキルは公私ともに役立つことでしょう。
本業のモチベーションアップにつながる
パラレルキャリアは、本業に対するモチベーションを高める効果もあります。
新たな挑戦を通じて得た達成感は、本業にも良い影響を与えるため、仕事に対する満足度が向上するという相乗効果も得られます。
新しく学んだスキルは、本業に対する新たなアイデアを生むことがあり、本業へのモチベーションアップにつながることでしょう。
パラレルキャリアの始め方
ミドル世代のキャリア戦略に活用できるパラレルキャリアは、行動を起こすことから始まります。
ここでは、パラレルキャリアの始め方をご紹介します。
ぜひ主体的な行動で、ご自身に合ったパラレルキャリアを見つけてください。
ボランティア活動に参加する
ボランティア活動への参加は、社会貢献を通じて新たなスキルや人脈を得られるというメリットがあります。
ボランティア活動は無償であっても多くの経験を積めるため、パラレルキャリアの1つとして選ばれています。
例えば、環境保護活動や教育支援活動への参加は、コミュニティとのつながりや地域への理解を深められることでしょう。
ボランティア活動という今までとは異なる視点に立つことで、新たなアイデアを得られるというメリットもあります。
また、ボランティア活動を通じて得た経験は、リーダーシップスキルやコミュニケーションスキルを高めることにも役立ちます。
勉強会や交流会に参加する
勉強会や交流会に参加して新たな知識や視点を得ることも、パラレルキャリアを始めるために欠かせないことの1つと言えます。
異なる業界や分野の人々が集まる講義や資格取得の講習会などが、貴重な出会いの場となります。
近年、オンラインによる勉強会やコミュニティも増加しており、時間や場所を選ばずに参加できる点は大きなメリットです。
交流会を通じて得た人脈は、将来的なビジネスパートナーやメンターとして頼りになる可能性も考えられることでしょう。
趣味や特技を活かせる活動を見つける
自分の趣味や特技を活かせる分野があれば、そこからパラレルキャリアを始めることも可能です。
趣味や特技をパラレルキャリアに活かすと高いモチベーションを維持できるというメリットもあり、継続的に取り組みやすい活動になることが特徴です。
例えば、写真が好きな人は写真家としての活動を始めたり、音楽が好きな人は派遣の音楽講師をしたりといった方法で、新たなキャリアを築けます。
また、趣味や特技を活かしたパラレルキャリアでは、価値の提供によって社会的な評価も得られることがあります。
興味のある分野や得意な分野での活動で高い評価を得られれば、専門職としてのパラレルキャリアを目指せる可能性があります。
パラレルキャリアを始めるときの注意点
パラレルキャリアには、分野が異なるスキルを身に付けたり、知識や経験を本業に役立てたりと、数多くの魅力やメリットがあります。
しかし、パラレルキャリアを始める際には、注意しておくべきポイントもあります。
副収入や新しい活動への楽しみだけに注目してしまい、のちに後悔してしまうことがないよう、注意ポイントも押さえてください。
本業の就業規則を確認する
パラレルキャリアを始めるときは、勤めている会社で副業が認められているかどうかを確認してください。
- 副業の禁止
- 競業する業務の副業禁止
- 秘密保持義務
特に、勤務先で副業が禁止されている場合は、パラレルキャリアを始めることで就業規則や雇用契約に違反してしまう恐れがあります。
副業を認める企業が増えてきたとはいえ、禁止されている条項に違反すると雇用契約を解除されてしまうことも考えられます。
また、たとえボランティアのような無償活動であっても、本業と類似する活動だと守秘義務を問われかねません。
パラレルキャリアの活動が、本業に問題がないかどうか不明なときは、勤務先の人事や法務部門で確認すると明確な回答が得られるでしょう。
時間や収入を管理する
パラレルキャリアを始めると、自己管理が重要となります。
本業と並行して活動することになるため、スケジュール管理を徹底したうえで取り組まなければ、遅延や怠慢が生まれてしまう可能性があるからです。
また、有償でパラレルキャリアの活動をするなら、収入を正確に管理し、税金の計算や記録を整理しておくことが大切です。
会社勤務とは違い、パラレルキャリアは自分自身でスケジュールと収入の管理をしなければなりません。
そのため、パラレルキャリアは、キャパオーバーしないよう自己管理が重要だと言っても過言ではないでしょう。
本業を疎かにしないようにする
パラレルキャリアで活動するときは、本業を疎かにしないことが大切です。
パラレルキャリアが本業に悪影響を与えないように優先順位を明確にし、それぞれのキャリアをバランスよく進める必要があります。
例えば、パラレルキャリアのために残業を断ったり、必要な業務を後回しにしたりすると、会社での立場が悪くなってしまいかねません。
パラレルキャリアで活動するときは、本業のパフォーマンスに良い影響を与えられるよう、それぞれの連携と区別を意識するようにしてください。
確定申告の有無を確認する
パラレルキャリアで得た収入は、確定申告の対象となる場合があります。
本業以外で、年間20万円以上の収入を得ているのに確定申告を怠ると、「申告漏れ」として税制面のペナルティ対象となってしまうこともあるのです。
パラレルキャリアで収入を得た場合は、税制トラブルを避けるためにも、本業の給与とは別に、収入の管理を確実に行っておきましょう。
ご自身で確定申告が難しい場合は、税務署や税理士に相談するなど、所得の申告漏れを防ぐようにしてください。
まとめ
パラレルキャリアとは、本業と並行しつつ活動することを指しますが、副業とは異なります。
スキルを高めたり経験を積んだりするために、報酬の有無に関係なく活動することがパラレルキャリアです。
そのため、ボランティア活動から専門的な分野での活躍など、パラレルキャリアの活動内容は多岐にわたります。
40代になると、生活水準の向上や老後資金の準備、社会的な地位の確立など、人それぞれキャリア戦略への考え方は異なることでしょう。
パラレルキャリアは、収入増加やスキル向上などのキャリア戦略、自己実現のために、人気を集めている取り組みです。
働き方が多様化した現代だからこそ、40代の方にも新たな分野へ進出できる可能性が高いため、ぜひご自身に合ったパラレルキャリアを探してみてください。