※この記事は、#3 ~何のために働くのか? 大切なことを教えてくれた人との出会い~ からの続きです。

●ずっと好きだったアロマをお仕事に

28歳のとき、ホテルの副支配人としての3年間の任期を満了し、清々しい気持ちで任地を後にしました。 ホテルのオーナーからは、新しくオープンする岩盤浴サロンの店長職を打診されていましたが、心機一転、夫とともに新しい仕事に挑戦しようと決めていました。

まずは、ほとんど休みなく働き続けた3年間を労うように、半月ほどかけて車で西日本を巡る旅へ。海外の美しい島にも足をのばし、大人の休日を満喫しました。今思い返しても、心から楽しく豊かな時間でした。

その後、日本橋の片隅にあるビルの一角を借りて、夫とともに「時間制カフェ」を立ち上げました。

今で言うコワーキングスペースのような形で、時間単位の料金をいただき、フリードリンクでくつろいでいただける「都会のひとやすみスペース」をコンセプトにしたカフェです。

近隣の百貨店にお勤めの方や、後に著名な作家と知って驚いた方など、さまざまなお客様が通ってくださいました。
けれど私は、事業を営むことの厳しさをあらためて痛感していました。

「もっと実力をつけなくては」

恐らく、夫も同じような思いを抱いたのでしょう。知人の誘いをきっかけに、元々志していた業界へ会社員として戻ることになり、私たちは店を手放す決断をしました。

その後、第1子、第2子の出産と育児を経て、ずっと好きだったアロマテラピーの専門資格を取得。

乳幼児の子育てと勉強の両立は決して楽ではありませんでしたが、その先に得られる専門性と実力は、これからの自分にとってかけがえのない財産になると信じていました。

●資格取得後、すぐにお仕事の依頼をいただけた理由

アロマテラピーインストラクターの資格を取得すると、すぐに仕事の依頼をいただきました。

最初の機会は、当時住んでいたマンションの自治会が主催する、住民向け講座の講師としてのお声がけでした。

その後も、近隣のママサークルや保健センターからご依頼をいただき、さまざまな講座で講師を務めることができました。

夏休みの子どもたちとアロマのバスボム作り。箱の蓋にはそれぞれ好きなシールを貼ってもらいました

資格取得後、すぐに仕事につなげることができた理由として、真っ先に思い当たるのは「自己開示」をしたこと。アロマへの想いや、勉強中に得た知識を、ただ純粋に伝えたくて、人に話す機会が自然と増えていきました。

その話を聞いてくれた方が、関係者へつないでくださり、仕事へとつながっていったのです。

アロマセラピストの資格取得の際には、30件のトリートメントカルテ(モデルさんへの施術実績)を提出する必要がありましたが、そのときも周囲の方々にたくさん助けていただきました。

応援し、手を差し伸べてくれる方がいる──人とのつながりのありがたさを、何度も実感しました。

平日は事務の仕事をしながら、土日はアロマ講座の講師として活動する。そんな二足のわらじ生活も、引っ越しを機にひと区切りを迎えることになります。

●自分らしさを発信してみたら、新しい世界が広がった

引っ越し後、新しい環境でもアロマ講座ができないかと、さまざまな場所へ足を運び、人と会いながら機会を探しました。

その中で、周囲のニーズが以前とは違っていることに気づきます。

土地柄や社会背景の違いもあるのでしょうか、これまでと同じ形で仕事を続けるのは難しそうだと感じました。

事務の仕事はリモートで続けながら、空いた時間を使って、新しいアロマのサービスを模索し始めます。

インターネットで情報を集めるうちに、Facebookやブログを使って自己発信し、独自のサービスやコミュニティを築いている方々の存在を知りました。

ブログは以前から書いていましたが、それが仕事につながるという発想はなかったので、とても新鮮に感じたのを覚えています。

「私もやってみたい」──そんな気持ちで、さっそくアカウントを作り、自分のことを発信し始めました。 最初は何を書けばいいのかも分からず、いろんな方のブログを参考にしながら、アロマへの想いや役立ちそうな情報、その日あったことや感じたことなどを、飾らずに綴っていきました。

書き続けていくうちに、思いがけず多くの方が投稿を見てくださるようになります。

コメントやメッセージをくださる方、投稿を読んでサービスを購入してくださる方も徐々に増えていきました。

日本全国、離れた地域に住む方が私のことを知ってくださり、お客様になってくださる。それは本当にすごいことです。日々感動しながら投稿を続けました。

また、同じように自己発信している仲間を探し、アンテナに引っかかった方にはすぐに会いに行きました。

交流会などのイベントにも積極的に参加しました。

そのうちに気の合う仲間ができ、今も10年以上のお付き合いを続けている方がいます。

彼女たちとの出会いは、私にとって人生の宝物です。

●いつだって新しい自分になれる

39歳のとき、次男の妊娠・出産を機に、アロマの活動を一旦休止しました。

前だけを見て走り続けてきた日々の中で、「一度立ち止まって自分と向き合いたい」という気持ちが、静かに芽生えていたのです。

もっと経験を重ね、視野を広げたい──そんな思いで、新しい仕事にチャレンジすることにしました。

選んだのは、オーダーメイド紳士服のお店での販売員という仕事。まったく新しい分野との出会いは、毎日が新鮮でワクワクの連続でした。

紳士服の知識を少しずつ身につけ、シャツのオーダーを一人で採れるようになった頃、夫に転勤の辞令が出ます。

当時、子どもたちは小5・小3・1歳。家族で相談し、みんなで引っ越すことを決めました。

結局、1年も経たずに戻ってくることになったのですが、この引っ越しがあったからこそ、今の生活があります。

一見偶然のように思えても、すべては必然。無駄なことなど一つもないのだなと感じます。

予測できない出来事が起きても、「これは自分にとって良い変化なのだ」と前向きに捉え、柔軟に新しいチャレンジへ踏み出してきました。

その積み重ねが、道を切り拓いてくれたのだと思います。

今もまだ旅の途中です。

1年後には、まったく違う世界に飛び込んでいるかもしれません。

「いつだって新しい自分になれる」

そう思うと、今日も私はワクワクしてしまうのです。

冬来たりなば春遠からじ。明日はきっと新しい自分になれるはず

国家資格キャリアコンサルタント
西田明日香さん

国家資格キャリアコンサルタント/AEAJ認定アロマセラピスト​/​アロマテラピーインストラクター​
遺跡調査員、オンラインショップの運営、ビジネスホテルの副支配人、時間制カフェの経営、オーダーメイド紳士服の販売員、人材会社のイベント企画など、経験職種は12種類+α。夫の転勤・転職、出産などの転機を乗り越えながら、業種、働き方、組織形態など多岐にわたる環境の中で経験と人脈をつなぎながら仕事を広げる。2020年よりオンラインアシスタント、ライター、キャリアコンサルタント、アロマセラピストなど幅広い分野で自分らしさを活かすパラレルワーカーとして活動。趣味はランニング、お灸、アロマテラピー。好物はタコと麩菓子。仕事も暮らしもまるごと楽しむ前のめりスタイルが持ち味。
1978年生まれ|山形県山形市出身|東京都多摩市在住|家族は夫と3人の子どもたち