こんにちは! 終活えんとらすと の山口聖子です。
2回目の前回は、終活について、実際にどんなことをすればいいの?ということについてお伝えしました。
今回はもう少し踏み込んで、終活の大きな関心事の一つになっている認知症とのかかわりについてお話ししてみたいと思います。

●終活と認知症

終活の分野は多岐にわたることは前回お伝えしましたが、中でも多くの人が心配されている認知症対策もその一つに挙げられます。
認知症と終活はとても大切な課題なのです。
認知症という響きにどんな印象がありますか? 認知症は怖いとか、認知症にはなりたくないとか、認知症になったらもう終わりだという言葉をよく聞きます。
そうですよね、認知症にはかかりたくないと誰もが思うことですし、そうなってしまったらと想像すると不安ですし、自分が自分でなくなってしまうような怖さもあります。 ですが、今や高齢者の5人に1人が、80歳以降ではおよそ4割が認知症になると言われています。 認知症予備軍を含めれば、もっと多くなります。 認知症になりたくなくても認知症になってしまうんですね・・・ ですので、認知症を恐れるのではなく、認知症になるかもしれない、認知症になった時のことを考えて準備しておいた方が、安心した生活を送れると思いませんか?

●認知症のタイプとリスク

認知症にはタイプがあります。 アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭型認知症など主に4つがあげられますが、この他にも種類があるとも言われています。
これらの認知症の中で、約7割がアルツハイマー型と言われています。 記憶障害、日時や場所がわからなくなる見当識障害など、日常生活においての自立が難しくなります。
年齢を重ねていけばそれなりに判断力は低下していきますが、認知症になると、更に心身の不具合が大きく出てきますので、頼れる人にサポートをお願いしなければならなくなります。

認知症になる原因はまだわかってきていませんが、アルツハイマー型認知症は、誰にでもあるアミロイドβたんぱくという特殊なたんぱく質が、何かの理由で体外に排出されずに脳に溜まってしまい、悪い物質となって脳の神経細胞を破壊して、脳が萎縮してしまうことで発症すると言われています。
ちょっとおかしいなと思ったら、認知症になる前の早い段階で検査をしてみましょう。 食事療法や運動療法、脳の機能訓練など早期の治療で大きく改善する場合もあります。 ですが、そこに期待しすぎてもいけないのではないかなと思います。
認知症と診断されてしまうと、契約行為の一切ができなくなるだけでなく、金融機関に知られてしまうとその時点で口座を凍結されてしまいます。 本人名義の自宅を売却して施設の入居費用にあてたくても、預貯金を利用して旅行に行きたくても、認知症の本人には何もできません。 
その時になって慌てないために準備をしておくことが、終活に繋がるというわけです。
これは前回お話しした、長生きリスクを見据え、財産を安心して管理したり、介護になった時のことも考えておきたいという部分になりますね。

●認知症のリスクに備える

実際にどんな対策が出来るでしょう。
認知症保険という保険会社からの商品も出てきましたが、それだけでは不十分です。
認知症になる前に、以下のような対策を検討してはと考えます。

  • 任意後見制度を利用して、あらかじめ信頼できる人を後見人として家庭裁判所に申請しておく

(ただし、信頼できる人を申請しても必ずしもその人が任命されるとは限りません)
また、認知症になってしまってからでは、任意後見の申請は出来ません。 家庭裁判所に後見人の申請をすると、家庭裁判所が見ず知らずの士業(弁護士や司法書士など)の人を法廷後見人として任命し、認知症になった人の財産の一切を管理することになります。 法廷後見人は、被後見人にご家族がいてもご家族に相談や報告の義務はありません。 これはちょっと切ないですが、お一人様には必要な制度でもあります。

  • 金融機関の商事信託(家族信託という商品もあります)を利用し、金融機関に財産の管理を任せる。
  • 民事信託(家族信託)を利用し、財産の管理は家族(信頼できる友人、知人でも可)に任せる。

*商事信託と民事信託は全く違います。 商事信託は、金融機関がビジネスとして営利目的で引き受ける信託であるのに対し、民事信託は、個人間で行われる非営利の信託です。

私は父を、民事信託の家族信託を利用して認知症対策をし、不動産の悪徳なリースバック会社から父名義の実家と父の財産を守ることが出来ました。 本当にヒヤリとした出来事でした。 家族のことは家族で守ろうというこの民事信託ですが、専門家が少ないので聞きなれない人も多いかもしれませんね。
あなたは、あなた自身やご家族を、どの方法で認知症のリスクに備えたいですか?

次回最終回は、だから終活は元気なうちにしかできないということを、いくつかの事例をあげてお伝えしたいと思います。

終活えんとらすと
山口聖子さん

  • 終活サポート「終活えんとらすと」代表として、中高年向けの終活支援を行う。
  • 両親の介護・看取りや、認知症・難病の方々のサポートを経験し、終活の大切さを実感。
  • セミナーや相談を通じて「今をよりよく生きる終活」を伝え、実践をサポートしている。