●4足、5足のわらじを履くフリーランス生活

「今度駅前に新しいフリースペースが出来るんですけど、何かやりませんか?」
「面白そうですね! ぜひぜひ」
こんな会話から仕事が広がっていくなんて、子どもの頃の自分が聞いたらびっくりするはず。
両親ともに地方公務員という家庭環境で育った私にとって、「仕事」とは毎朝決まった時間に家を出て職場へ向かい、いつもの仲間といつもの仕事をするもの。数年おきに異動はあっても、基本的には1つの仕事を定年まで続けるのが「普通」だと思っていました。

40代後半となった今、私はフリーランスとして企業のオンラインアシスタント、ライター、キャリアコンサルタント、アロマセラピストなどいくつもの仕事を掛け持ちしながら働いています。こんな働き方があるなんて、当事者になるまでは想像もしませんでしたし、もしかしたら、こんなスタイルが可能になったのもここ最近のことなのかもしれません。

フリーランスとして仕事を始めた頃。PCに向かうデスクのそばで遊ぶ次男

●結婚後、転職を繰り返した20代、30代

もちろん、最初からこんな風だったわけではありません。
2000年に大学を卒業し、最初に就いたのは遺跡調査員という仕事。専門機関の職員として2年間働いた後、23歳で結婚。遠距離恋愛を成就させての結婚だったので、結婚=引越しです。やむなく退職し専業主婦となりました。

専業主婦として過ごしたのはほんの2ヶ月ほどでしたが、それまで家事をほとんどしてこなかった私にとっては家事スキルを一から身につける良い機会でした。何とか一通りこなせるようになった頃、父の言葉が脳裏をよぎりました。「パートでも何でも良いから、仕事は続けなさい」

早速、近所のスーパーに置いてあったアルバイト情報誌を手に取り、健康食品を扱うオンラインショップ運営の仕事に応募しました。勤務時間は9時〜17時、時給は750円くらいだったと思います。
Amazonの日本上陸が2000年11月、楽天市場が日本初のオンラインショッピングモールとして東証マザーズに上場したのが2001年のことですから、オンラインショッピングなんてまだ一般的ではなかった時代です。当然、何をする仕事なのか詳しくは分かっていませんでしたが、新しい環境にわくわくと期待感が膨らんでいました。
好奇心と楽観性は私の持ち味。この性格ゆえにカラフルなキャリアが出来上がっていったのだと思います。

●思い通りにならないことばかりの綱渡り生活

それから40歳くらいまでの15年間は、1年〜3年くらいのスパンで転職を繰り返しました。ようやく軌道に乗ったと思えば退職して、ゼロから転職活動。千葉、滋賀、青森、東京、住まいも転々と変わり、そのたびに新しい環境に飛び込んでいきました。

第1子を出産した後は、仕事と家事・育児とのバランスがなかなかつかめず苦労しました。アクセルを踏んだりブレーキをかけたり、調整がうまくいかず体調を崩したこともあります。
思い通りにならないことがあまりに多く、諦めざるを得ないこともたくさんありました。

子どもがいることを理由に書類選考で落とされたり、ようやく採用された職場では、子どもたちがリレーのように感染症に罹って長期欠勤を余儀なくされたり、少しずつ信頼を積み上げて時給アップの話をいただいた矢先に夫の転勤が決まったことも。

どの仕事も楽しくやりがいのあるものでしたが、数年ごとに環境がリセットされ、新人としてのスタートを繰り返すうちに、「責任ある仕事を続ける」という選択肢は次第に遠ざかっていきました。
新人としてはやや居心地の悪さを感じる年代になっても、気づかないふりをして目の前の仕事と家庭のバランスをとり続ける。まるで駆け足で綱渡りをしているような毎日でした。

長男9歳、長女7歳、次男1歳の頃。どこへ行くにも大きなリュック

●40代、いつの間にか自分だけが取り残されてしまった?

幸い、職場では素敵な方々とのご縁に恵まれ、嫌な思いをしたことはほとんどありませんでしたが、常にフルスロットルで走り続けていたせいか、年末年始やゴールデンウィークには毎年のように寝込んでいました。

40歳を過ぎた頃、ふと周りの空気が変わったことに気づきます。
夫の転勤で東京から静岡へ引越し、がらりと環境が変わったタイミングでした。家の片付けや子どもたちの転校手続きが落ち着き、立ち止まって周りを見渡してみると、結婚・出産を経験しながらも着実にキャリアを構築し、自立して働く女性たちがいました。
「経験、実績、専門分野…私には積み上げたものが何もない」
いつの間にか自分だけが取り残されてしまったような焦りと恐怖を感じました。

NEXT⇒#2 ~私、いつまで最低賃金で働き続けるんだろう?~ に続きます。

国家資格キャリアコンサルタント
西田明日香さん

国家資格キャリアコンサルタント/AEAJ認定アロマセラピスト​/​アロマテラピーインストラクター​
遺跡調査員、オンラインショップの運営、ビジネスホテルの副支配人、時間制カフェの経営、オーダーメイド紳士服の販売員、人材会社のイベント企画など、経験職種は12種類+α。夫の転勤・転職、出産などの転機を乗り越えながら、業種、働き方、組織形態など多岐にわたる環境の中で経験と人脈をつなぎながら仕事を広げる。2020年よりオンラインアシスタント、ライター、キャリアコンサルタント、アロマセラピストなど幅広い分野で自分らしさを活かすパラレルワーカーとして活動。趣味はランニング、お灸、アロマテラピー。好物はタコと麩菓子。仕事も暮らしもまるごと楽しむ前のめりスタイルが持ち味。
1978年生まれ|山形県山形市出身|東京都多摩市在住|家族は夫と3人の子どもたち