
長きにわたるゼロ金利政策が終わり、“金利のある時代”が再び到来しました。
住宅ローンの変動金利がまた上がったと聞いて、不安になる人。
これから借りようと思うけれど、どうしたらいいか迷う人。
「変動金利と固定金利、結局どっちがいいの?」
金利変動の局面を迎えたいま、改めてこのテーマを考えてみたいと思います。
この記事でわかること
- 住宅ローンの金利には、変動金利と固定金利がある
- 家計や返済期間などによって、変動金利と固定金利の向き不向きが違う
- 金利が1%上がるだけでも、返済額は変わってくる
- 家計にとって、住宅ローンで一番考えなくてはならないのは金利ではなく「返済比率」
- 金利上昇に備えて、返済比率と家計のこれからを計算して、無理のない返済計画を立てるのが大事
住宅ローンは変動金利と固定金利、結局どちらがいいのでしょうか。金利上昇のニュースが飛び交ういま、気になる住宅ローンの今後について考えます。
目次
- 住宅ローン金利の上昇、どこまで続く?
- まず押さえたい、変動金利と固定金利の基本
- 「現状のトレンド」は変動金利が圧倒的、しかし…
- 変動金利が向いている人・固定金利が向いている人
- 金利が1%上がると、これだけ返済額が変わる
- 最終的に大事なのは「返済比率」!
- 借り換えを考える人へ―メリットと、見落としがちなコスト
- 状況別 これからの住宅ローンとの向き合い方
- (1) すでに返済中の人
- (2) 最近ローンを組んだ人
- (3) これからローンを組む人
- 家計に無理のない返済計画を~今日できる3つのこと~
住宅ローン金利の上昇、どこまで続く?
日銀の政策転換により、金利上昇のニュースが増えてきました。
「また住宅ローンの金利が上がったらしい」
「借り換えたほうがいいの?」
そんな話題を耳にするたび、なんとなく落ち着かない気持ちになるという人も多いのではないでしょうか。特に40〜60代は、住宅ローンとの距離感が人によって大きく違う世代です。すでに返済中という人もいれば、最近ローンを組んだばかりの人、これから家を買うか迷っている人もいます。
「このまま変動で大丈夫なのだろうか」
「固定にしておいたほうが安心だったのでは」
金利上昇がどこまで続くか分からないからこそ、人によって悩みや不安はさまざま。これからの住宅ローンは、どのように考えていったらいいのでしょうか?
まず押さえたい、変動金利と固定金利の基本

まず、住宅ローンの金利の種類についておさらいしましょう(図表1)。住宅ローンの金利には大きく分けて「変動金利」と「固定金利」の二つがあります。文字通り、返済期間中に金利が変わるもの(変動金利)と、変わらずに固定されるもの(固定金利)の二つです。
「変動金利」は、原則として半年ごとに金利が見直されます。しかし、実は変動金利には、返済額が5年間変わらないという「5年ルール」、さらに6年目以降はそれまでの返済額に対して125%の金額までしか上げてはならない「125%ルール」があります。そのため、月々の返済額が急に跳ね上がることはありません。
これらのルールのもと、変動金利は初期金利を低く設定でき、毎月の返済額も抑えられるというメリットがありますが、金利が上がれば将来的な総返済額が増えるというリスクもあります。いま問題になっているのは、まさにこの金利上昇による総返済額への影響です。
一方、「固定金利」は、基本的に契約したときの金利がずっと変わりません。返済額が一定なので、家計管理がしやすく、精神的な安心感があります。しかし、変動金利より金利が高めになることが多いため、“安心料”として選ばれる側面もあります。
なお、固定金利には、全期間固定のものと、期間選択型のものがあります。前者は「フラット35」や「全期間固定」などで、契約時の金利が最後まで変わりません。後者は「10年固定」「20年固定」など、決められた期間内しか当初金利が適用されず、期間終了後は変動金利へ移行します。
固定金利の期間が終わり変動金利へ移行した場合、「5年ルール」「125%ルール」が適用されません。もしその時点で新たに期間選択型を設定し直そうすると、手数料をとられる場合もあります。長期でローンを組む際は注意が必要です。
「現状のトレンド」は変動金利が圧倒的、しかし…

ここしばらく、変動金利は固定金利よりも大幅に安い傾向にあったため、8割以上の人が変動金利を選択していました(図表2)。しかし、金利上昇のニュースが続くようになり、最近は固定金利への関心がじわじわ増加しています。これから借りるという人にとっては、変動金利・固定金利ともに上昇しているなかで、どちらを選べばいいか判断に迷うところです。
一般的に、変動と固定の金利差が縮まると、固定金利を選ぶ人が増える傾向にあります。とはいえ、世の中のトレンドがそのまま“あなたの正解”になるとは限りません。金利の動きは誰にも読めませんし、家計の状況は人それぞれだからです。
変動金利が向いている人・固定金利が向いている人
そうはいっても、何も基準がないと選ぶこともできません。そこで、あくまで傾向として、変動金利が向いている人・固定金利が向いている人の例を見てみましょう(図表3)。

「変動金利」が向いているのは、家計にある程度の余裕がある人、今後収入が上がる見込みのある人です。もし金利が上がったとしても、住宅費を払い続けられるだけの余力がある、あるいは、十分な資産があり、繰り上げ返済などで調整できる柔軟性がある、といった場合には、変動金利のメリットを活かしやすくなります。返済期間が短い場合も、金利変動の影響を受けにくいため、変動金利のほうがメリットが大きいとされています。
一方、「固定金利」が向いているのは、金利変動の動向に不安を抱えたくない人です。教育費や車などの大きな支出を控えている、現時点で貯蓄が少ないという人にとっても、返済額が変わらないという安心感は、精神的な負担を大きく減らしてくれます。
どちらとも決めきれない人には、変動金利と固定金利の両方を組み合わせて借り入れる「ミックスローン」という第三の選択肢もあります。低金利の恩恵を受けつつ、金利上昇時の総返済額の増額を抑制できるやり方で、組み合わせ比率も自由に設定が可能です。
金利が1%上がると、これだけ返済額が変わる
2026年4月現在、大手銀行の変動利率はおおむね1%前後で推移しており、今後も金利の上昇が予想されています。もし、変動金利で4,000万円を金利1%、35年ローン(元利均等返済方式)で借り入れている場合、金利の上昇でどれくらい返済額は変わるのでしょうか。図表4を見てみましょう。

金利1%のとき、月々の返済額は11万2,914円です。これが2%に上がると、月々の返済額は13万2,505円となり、およそ2万円の値上げ、3%では月4万円もの値上げとなります。
これらの値上げ幅をどれだけ許容できるかは、各家庭の家計状況によって大きく異なるでしょう。現状ですでに、住宅費を含めた固定費・生活費を支払うと収支がギリギリになってしまう……という人は、早急に家計と返済計画の見直しが必要です。まずは、ご自身の借入金額や返済額でシミュレーションしてみてください。
最終的に大事なのは「返済比率」!
金利の話をしていると、どうしても「変動のほうが安い」「固定のほうが安心」といった比較に意識が向きがちです。しかし、実はもっと大事な視点があります。それが「返済比率」です。
返済比率とは、毎月の返済額が手取り収入の何%を占めているかを示す指標です。一般的には20〜25%以内が“安心ライン”と言われています。たとえば手取りが月40万円なら、
- 20% → 8万円
- 25% → 10万円
毎月の返済額がこの範囲に収まっていれば、家計が大きく崩れにくいという目安になります。返済比率の上限は約30%とされ、35%を超えると生活に大きな影響が出てきます。
40〜60代は、教育費・介護・老後資金など、これからお金が必要になる場面が増える時期です。最初から返済比率が高いと、金利が少し上がっただけで家計が苦しくなってしまいます。逆に、返済比率が適正であれば、金利が多少動いても家計が大きく崩れることはありません。
先の図表4に示したように、金利が1%→2%→3%…と上がっても、返済比率が許容範囲内であればまだ安心という目安になります。金利の種類もさることながら、まずは家計に占めるローンの返済額が適正な割合になっているかを見直してみましょう。
借り換えを考える人へ―メリットと、見落としがちなコスト
金利が上がると、「より低い金利へ借り換えたほうが得なのでは?」と考える人が増えます。しかし、借り換えには意外と大きな手数料がかかり、必ずしも得にならないこともあります。

図表5のように、ローン残高が3,000万円で25年の残存期間がある人が、全額借り換えを検討するとします。借り換え前の利率が1.3%で、借り換え後の利率が1.0%(0.3%差)のとき、利息軽減額はおよそ123.6万円です。
一方、借り換えにかかる主な費用としては、一例として、
- 事務手数料:66万円(借入額の2.2%)
- 抵当権抹消費用(旧ローン):2万円
- 抵当権設定登録免許税(新ローン):12万円(借入額の0.4%)
- 司法書士報酬:10万円(相場)
- 印紙税(1,000万円超5,000万円以下):2万円
【合計 92万円】
という金額が別にかかります。
利息軽減額の123.6万円から92万円を差し引くと、実質的な軽減額は31.6万円です。
しかし、もし借り換え後の利息が1.1%(0.2%差)だった場合はどうでしょうか。手数料を引くと10万円近い増加で、かえって損になってしまいます。
返済期間が短いほど利息軽減額も小さくなるため、10年以下の借り換えも、メリットは薄くなるでしょう。別に保証料などを求められる場合もありますので、借り換えの際は「金利差×残り年数×手数料」を計算し、どれくらいメリットが得られるかよく考えて判断するようにしましょう。
状況別 これからの住宅ローンとの向き合い方
ここまで見てきたように、変動にも固定にもメリット・デメリットはあります。どちらが良い・悪いということでもなければ、正解もありません。各家庭の置かれている状況によっても住宅ローンのとらえ方はさまざまです。最後にその点を整理しておきましょう。
まず、「固定金利」の人に関しては、今後も返済額は変わらないため、生活への影響はありません。現在の利率に納得しているなら借り換えの必要もないでしょう。
「変動金利」の人に関しては、状況別に以下のような選択肢が挙げられます。
(1) すでに返済中の人
借り換えを検討するなら、「金利差」「残り年数」「手数料」この3つのバランスが重要です。住宅ローン控除の期間が過ぎている場合は、繰り上げ返済で残債総額を減らすことも有効です。しかし、40~60代は突然の支出が起こるとも限らないため、繰り上げの時期と金額に関しては慎重な判断が求められます。
変動金利は依然として低い水準ではありますので(2026年4月時点)、余剰資産は繰り上げ返済に回すのではなく、運用に回して増やすという考え方もあります。
金利は誰にも読めませんが、返済比率はある程度コントロールすることができます。金利上昇によって家計費に占めるローンの返済比率が上がるということは、逆に収入が増えればその比率を下げることができるからです。現在の手取りを増やす、新たに仕事・副業を始めるといった方法で、収入を増やす選択肢も検討しましょう。
(2) 最近ローンを組んだ人
変動で借りた人は、5年ルール・125%ルールのため、返済額が急に上がることはありません。また、住宅ローン減税が利用できるうちは無理に繰り上げ返済する必要もありません。
しかし、金利動向は定期的にチェックしておきましょう。月々の返済額は急変しなくても、将来的な総返済額には少なからず金利上昇の影響が出てきます。「(1) すでに返済中の人」と同様、今後の金利推移や残り年数、残債に応じて、借り換えや繰り上げ返済を検討するタイミングが来るかもしれません。
(3) これからローンを組む人
これまでは超低金利時代だったため、「年収の8~10倍まで借りられる」といった営業トークを聞くこともありました。しかし、それだけ高額の融資を受けてしまうと、金利上昇の局面に対応しきれない可能性があります。現実的に借りられる額、返せる額をしっかり考え、目先の返済額の安さだけで判断しないことや、「年収の何倍」といった大まかな計算ではなく、返済比率30%未満を維持すること大切です。
教育費や老後資金など、これからの家計の流れを具体的にイメージしてからローンを選びましょう。
家計に無理のない返済計画を~今日できる3つのこと~
住宅は、人生で最も大きな買い物のひとつです。だからこそ、金利の種類に振り回されるのではなく、家計に無理のない返済計画を立てることが何より大切です。金利変動の行方をやみくもに不安がるのではなく、
- 現在の返済比率を計算する(これから組む人は現在の利率で仮計算)
- 今後5年間の大きな支出を書き出す
- 金利が1%・2%上がった場合の返済額と返済比率を確認する
これらの“今日できる3つのこと”で、まずは家計の見直しから始めましょう。