老後の住まいは「賃貸」と「持ち家」、どちらがいいのでしょうか。よく取り上げられるこの問題に悩んだ経験のある方も多いことと思います。人によって経済状況、家族構成、考え方が違うため、「これが正解」と断言するのが非常に難しい問題です。

これまで日本では、持ち家信仰が強いとされてきました。しかし最近では、若者を中心に余計な物を持たないミニマリストが流行するなど価値観は変化しており、賃貸を選ぶ人も増えています。老後の住まいは「賃貸」と「持ち家」どちらがいいか、今こそ改めて考えてみませんか。

この記事でわかること

  • 「賃貸」と「持ち家」それぞれにメリットとデメリットがある
  • 老後の賃貸物件選びのポイント
  • シニア世代は賃貸物件を借りることが難しいケースもあるので対策が必要
  • 老後の快適な住まいのためには早めの準備を

老後の住まいは本人の経済状況や考え方などにより「賃貸」と「持ち家」、どちらがいいか変わってきます。これから解説するそれぞれのメリット・デメリットを、老後に後悔しない住まい選びに活用してください。賃貸物件選びで役立つ重要ポイントも紹介します。

目次

  1. 「賃貸」と「持ち家」のメリット・デメリット
    1. 「賃貸」のメリット
    2. 「賃貸」のデメリット
    3. 「持ち家」のメリット
    4. 「持ち家」のデメリット
  2. 老後に後悔しない賃貸物件選びのポイント
    1. 立地選びが重要になる
    2. 高齢者も住みやすい設備、間取りを検討する
    3. 高齢者向け賃貸住宅を選択肢に入れる
  3. 高齢者は賃貸物件を借りにくい?その理由と対策とは
    1. 高齢者が賃貸物件を借りにくい理由
    2. 高齢者が賃貸物件を借りるための対策
  4. 老後の住まいの快適さには、早めの準備が大切

「賃貸」と「持ち家」のメリット・デメリット

まず、「賃貸」と「持ち家」の、特に心理的な特徴をまとめます。

「賃貸」と「持ち家」の特徴

「賃 貸」:柔軟性がある

「持ち家」:安定性、安心感がある

次に、メリットとデメリットを具体的に説明します。かなり違いが大きいため、これらを理解しておくと住まい選びに役立つでしょう。

「賃貸」のメリット

①変化に対応しやすい

ライフスタイルや人生のステージに応じて、スピーディーに住み替えしやすいことが大きなメリットです。「子どもが小さい頃は広い家に住む」「子どもが独立したら、部屋数の少ない家に住む」「親の介護のために、実家の近くに住む」といった、その時の状況に合わせた柔軟な選択をしやすいです。

②建物メンテナンスを貸主に行ってもらえる

建物のメンテナンスは貸主が行うため、修繕費用など住まいに関する大きな支出がありません。

「賃貸」のデメリット

①家賃と更新料を払い続ける

持ち家の場合、住宅ローン完済後は、住居に関する費用が少なくなります。戸建てなら、税金と保険料、修繕費のみ、マンションであれば税金、保険料、管理費、修繕積立金のみです。しかし、賃貸の場合は費用が少なくなることはあまりなく、住んでいる限り家賃や更新料を払い続ける必要があります。

さらに、賃貸の場合はどれだけ払い続けても自分の資産とはなりません。長生きして想定よりも長く家賃を払い続けたとしても、自分の資産とならないばかりか、生活が困窮する「長生きリスク」につながってしまうかもしれません。

また、家賃は物価変動の影響を受けます。家賃相場には他の価格より遅れて上がる「賃料の遅行性」という特徴があり、ここ数年の物価上昇の影響で家賃の相場も上昇しています。賃貸に住む限り、家賃の変動について常に注意が必要です。

②高齢者は賃貸物件を借りにくい

高齢者は経済的な不安定さ、保証人が見つけにくい、病気や突然死のリスクがある、といった理由から、賃貸物件を借りることが難しい場合もあります。

「持ち家」のメリット

①資産になる

住宅ローン完済後は土地、建物が完全に自分の資産になります。そのため、売却や相続を自分の意志でできます。都心部や人気エリアの物件は、購入時より資産価値が上昇することもあります。

②住宅ローン控除の恩恵を受けられる

「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」を受けられる点も大きなメリットです。住宅ローン控除とは、一定の条件を満たす住宅ローンを組んだ場合、年末時点のローン残高に応じた金額を、所得税や住民税から控除できる制度です。

③住宅ローン完済後は固定費を抑えられる

住宅ローン完済後は賃貸物件のように毎月家賃を払う必要がなくなるため、老後の経済負担が軽くなります。

④自由にリフォームできる

持ち家の場合、内装も外観も思いのままにリフォームできます。家族構成やライフステージの変化に合わせて、制約なしに自分の好きな住まいを作れます。

⑤安定的な生活環境と精神的安心感がある

持ち家の場合は長期間同じ地域に住み、地域コミュニティに根付いた生活となります。子どもがいるご家庭の場合、転校することなく安定した環境で過ごせるのは大きなメリットといえるでしょう。賃貸物件のように契約終了や家賃値上げ、定期的な更新料などもないため、住まいに関しての状況が外からの要因で変化しづらいという安心感もあります。

「持ち家」のデメリット

①相続問題となる場合がある

不動産は高額な資産です。しかし、現金のように簡単に分けることができないため、相続時にトラブルとなるケースがあります。のような改正がされるかをご紹介します。

たとえば、

  • 誰が不動産を相続するのか
  • 不動産を相続する相続人は、どうやって他の相続人に代償金を払うのか
  • 不動産を相続したくても、他に資産がないために相続税を払えない

といったことが問題点となりがちです。

誰も相続したがらない不動産の場合、処分にも困ります。現在、放置された不動産が増えており、空き家が社会問題となっています。

持ち家の場合、自身の死後は不動産をどのように処分するのか、家族と話し合った上で生前から準備しておくことが大切です。

②修繕費、固定資産税が必要である

持ち家の場合、住宅ローン完済後は毎月支払う住居費が不要です。しかし、固定資産税の支払いが毎年、修繕費やリフォーム費用は不定期に発生します。

家の大きさや構造などによって修繕やリフォームに必要な金額にも差があるため、長期的な修繕計画を立てておくといいでしょう。

修繕費用目安

外壁リフォーム 100~200万円
キッチンリフォーム 150~200万円
浴室リフォーム 120~200万円
トイレリフォーム 20~50万円
コンロ交換 30万円
給湯器交換 10~30万円
エアコン交換 10万円

③災害時のリスクが大きい

災害が発生して被災した場合、賃貸ほど身軽に動けないのはリスクと言えます。地震や洪水、土砂災害などが発生した場合、賃貸であればすぐに転居することができます。しかし、持ち家だとローン返済が残っていたり、地域に密着して住んでいたりすることから、そのまま住み続けるケースが多いです。その場に住み続けるためには、自費での修繕や建て替えが必要になるケースもあります。

老後に後悔しない賃貸物件選びのポイント

「持ち家」と「賃貸」それぞれにメリット、デメリットがあり、自身のライフスタイルに合わせて考える必要があります。それでは、老後のライフスタイルを見据えて「賃貸」を選んだ場合の、物件選びのポイントを確認しておきましょう。「持ち家」の物件探しをする際にも役立つポイントとなるはずです。

立地選びが重要になる

①公共交通機関が利用しやすい場所

自家用車以外の交通手段がある地域が暮らしやすいです。高齢者の自動車事故のニュースをよく目にしますが、年を重ねるごとに、車の運転が危険になります。人により差はありますが、免許返納をして運転を止めるべき時期は必ず訪れます。車がなければ生活できない地域を避け、できれば複数の公共交通機関が利用できる地域を選択すると、利便性が高いです。

②買い物に困らない環境

日々の生活に必要な物を買えるスーパー・コンビニなどがある環境を選ぶといいでしょう。最近ではネット通販やネットスーパーの発達により、地方や過疎地にも配達するサービスがあります。しかし、災害時に流通網がマヒすると必要な物が届かなくなることがあるかもしれません。また、配送料の大幅変更の可能性や、高齢になった際にインターネットを若い時のようには利用できなくなる可能性なども考えられます。インターネットで買い物するとしても、日々活用できる実店舗が近くにあるとやはり便利です。

③病院、公共施設が近い地域

年齢にかかわらず、病院、公共施設が近くにあると心強いものです。高齢になると病院に行く頻度が上がるケースも多く、自宅の近くにかかりつけ医院があり、いざという時に頼れる総合病院も近くにあると、生活の快適さや安心感につながります。

高齢者も住みやすい設備、間取りを検討する

家の内外ともに段差がない、手すりが設置されている、通路が広い、といったバリアフリー仕様の住宅なら、高齢になっても安全に暮らせます。特にマンションの共有部は自分では変更できないため、しっかりと確認する必要があります。

高齢者向け賃貸住宅を選択肢に入れる

老後の賃貸物件探しでは、一般的な賃貸物件に加えて、「高齢者専用賃貸住宅」など高齢者向けの物件を選択肢に入れるのもおすすめです。高齢者向けの賃貸住宅や施設には様々な種類があり、内容や入居資格が異なります。自分に合った住まいを選ぶことで老後の暮らしが快適になります。

高齢者は賃貸物件を借りにくい?その理由と対策とは

賃貸を選ぶ人が増えている反面、「高齢者」は賃貸物件の入居制限の対象となるケースがいまだ多いという現実もあります。

高齢者が賃貸物件を借りにくい理由

①支払能力への不安

貸主は、入居者が将来にわたり滞納なく家賃を払い続けてくれるかという点を気にかけています。高齢者は、今は仕事をして収入を得ているとしても、いつまで働くことができるのかわかりません。リタイアして年金生活となった時に、公的年金だけでは足りず預貯金を取り崩す生活スタイルになることもありえます。こうした将来の経済的な不透明さが、貸主にとっては「いつか支払が難しくなるのでは」という不安につながるため、高齢者との契約にはどうしても慎重になりがちです。

②連帯保証人の確保が難しい

賃貸物件の契約には連帯保証人を必要とすることが多いです。若い人であれば親や親族に頼むことも多い連帯保証人ですが、入居者自身が高齢になると親や親族に頼むのが難しかったり、保証人としての条件に合う人がなかなか身近にいなかったりするケースも多く、高齢者が賃貸物件を借りづらい理由の一つとなっています。

③万が一の病気・突然死のリスク

一般的に、高齢者は健康上の急変や部屋の中での万が一の事態が、若い人よりも多いです。特に一人暮らしの高齢者の場合には、部屋で倒れた時に発見してもらえるのが遅くなってしまうこともあるかもしれません。貸主としては、発見が遅れたことなどで物件の資産価値が下がってしまうのを不安に感じて、高齢者との契約に消極的になるケースが見られます。

高齢者が賃貸物件を借りるための対策

高齢者が賃貸物件を借りる時には、貸主に安心感をもってもらうために、こういった「賃貸物件を借りにくい理由」への対策を講じましょう。

①経済的に安定していると証明する

貸主のもつ家賃滞納への不安を解消するため、金銭的に余裕があることを証明します。収入証明書や年金受給証明書、預貯金通帳のコピーを提示して、支払い能力があることを示します。また将来にわたって支払いに無理のない賃料の物件を選ぶことも大切です。

②連帯保証人を確保する

連帯保証人がいることは貸主にとって重要なポイントです。親族が保証人であれば家賃滞納リスクへの備えができます。連帯保証人が確保できない場合は家賃債務保証制度を利用するなど、貸主に信頼してもらうための工夫をしましょう。

③緊急時の連絡先を共有しておく

頼れる人が近くに住んでいれば、緊急時もすみやかに対応できます。こまめに様子を見に来てもらえればなおさら安心です。高齢者の一人暮らしには孤独死のリスクもあるため、万が一の時に対応してくれる人がいることや、その人の連絡先を貸主に伝えておくことで安心してもらえます。

老後の住まいの快適さには、早めの準備が大切

早めの準備が、老後に後悔しない快適な住まいの実現につながります。60代はまだ元気ですが、70歳を過ぎると少しずつ心身の衰えが出て来る方も多いです。今回解説した「持ち家」「賃貸」それぞれのメリット、デメリットに加えて、自身のライフスタイルや経済状況、健康状態なども考慮に入れて、早めに「老後の住まい」の検討を始めませんか。自分はどのように老後を過ごしたいのか、先を見越して考えて、動き始めましょう。