仕事の内容やプライベートとのバランス、キャリアアップ、再就職など、「働く」ことに関する悩みは尽きません。そんな時、より良いキャリアを実現するための助言を相談者に行うのが「キャリアコンサルタント」の役割です。

国家資格として人気のあるキャリアコンサルタントですが、その具体的な仕事内容や資格の活かし方については、あまり知られていないかもしれません。そこでここでは、キャリアコンサルタントの働き方とともに、キャリアコンサルタント兼研修講師として活躍されている三井(みい)あゆみさんの働き方をご紹介します。また、キャリアコンサルタントの仕事についてよく耳にする疑問について、三井さんに詳しく解説していただきました。

-この記事でわかること-

  • キャリアコンサルタントはキャリア形成のための助言を行う専門職
  • 企業やハローワーク、学校など、キャリアコンサルタントの活躍する場は多くある
  • ただし、資格を持っているだけではすぐには仕事につながらない
  • 経験や知識、スキルとキャリアコンサルタント資格を掛け合わせることが大切

目次

  1. キャリアコンサルタントとは
  2. キャリアコンサルタントの具体的な仕事内容
    1. 相談者との面談
    2. 就職活動に必要な書類作成のサポート
  3. キャリアコンサルタントが活躍するフィールド
  4. 資格があってもすぐには働けない?キャリアコンサルタントとして仕事を得るには
  5. フリーランスのキャリアコンサルタントがカウンセリング案件を得る4つの方法
    1. キャリアコンサルタントが任意で所属する団体に所属し、仕事やボランティア情報から応募する
    2. 紹介
    3. 求人媒体から探す
    4. 自身のホームページやSNSなどを活用し、キャリア面談を行っていることを発信して面談につなげる
  6. キャリアコンサルタントとして再就職が目指せる業種は
  7. キャリアコンサルタントの資格は人生経験が強みになる

キャリアコンサルタントとは

キャリアコンサルタントは、個人のキャリアや職業生活に関する相談に応じ、アドバイスや支援を提供する専門職です。

たとえば、企業で働く人は「もっと自分に合った仕事があるのではないか」「今よりいい条件で働きたいけれど、何から始めたらいいかわからない」という悩みを抱えているかもしれません。また、出産を機に仕事を辞めた人は「子育てが一段落したので復職したい」と希望することもあります。

こうした状況で必要なのが、「キャリアコンサルティング」です。キャリアコンサルタントは、キャリア形成に悩む人々に寄り添い、相談者がより自分らしく働けるようにサポートします。

キャリアコンサルタントの具体的な仕事内容

では、キャリアコンサルタントは具体的にどのような仕事をしているのでしょうか。ここでは、キャリアコンサルタントの主な業務である「相談者との面談」と「書類作成の支援」についてご紹介します。

1.相談者との面談

キャリアコンサルティングは、主に相談者との面談を通じて行われます。この面談で相談者の適性や能力、関心などを引き出し、相談者が「なりたい姿」に近づくための方法を一緒に考え、その実現を支援します。

たとえば、相談者とともに適切な仕事を探したり、スキルアップの具体的な方法を提案したりします。また、これまでの経験が活かせる仕事や、希望に近い仕事を提示するなど、相談者の適性を最大限に活かした仕事選びを行います。

2.就職活動に必要な書類作成のサポート

キャリアコンサルタントは、相談者が就職活動を行う際に必要な書類作成もサポートします。たとえば、ハローワークでの求職活動に必要な「ジョブカード」や、転職時に求められる「職務経歴書」の作成を支援します。

これらの書類は基本的に求職者本人が作成しますが、どのように書けば良いのかわからない人も多くいます。そのような場合、書き方のアドバイスをしたり、作成した書類を添削したりして、就職活動を支援します。

このほか、キャリアコンサルティングに必要な知識や情報を学ぶことも大切な仕事の1つです。キャリアコンサルタントは国家資格であり、5年ごとの資格更新が義務付けられています。

資格を更新するには講習の受講などが必要ですが、それに加えて日常的な自己研鑽も求められます。特に、相談者の状況をより深く理解するため、自分の専門分野や担当する相談者に関連する講習を受けるなど、知識のアップデートが必要です。

キャリアコンサルタントは、資格を取得した後も日々学び続ける必要のある仕事なのです。

キャリアコンサルタントが活躍するフィールド

相談者の思い描くキャリアを明確にし、その実現に向けて伴走していくキャリアコンサルタントの活躍の場は多岐にわたります。特に、キャリアコンサルタントの存在が強く必要とされているフィールドをご紹介します。

企業
  • 個別面談を通じ、従業員のキャリア向上を支援する
  • 新たなキャリアをスタートした後の心のケアを行う
学校などの教育機関
  • 就職支援や進路相談を行う
  • 履歴書やエントリーシートの添削
  • 高校における進路指導室での勤務
ハローワークなど公的な職業紹介所
  • 各種適性検査の結果にもとづいた職業選びのサポート
人材サービス会社
  • 労働者と企業の間に立ち適切なマッチングを行う
その他
  • キャリア開発に関する講義やプレゼンテーションを行う
  • フリーのキャリアコンサルタントとして活躍
<企業>

従業員は、入社後に昇進や異動、配置転換など、さまざまなキャリアステージを経験します。これらの変化は仕事への意欲や生産性に直結するため、各従業員のキャリア向上を支援する専門家が必要です。

キャリアコンサルタントは個別の面談を通じて、従業員が自分自身でキャリアを積極的に築けるよう支援します。まず、カウンセリングを通じて従業員の能力やスキル、価値観を客観的に理解させることから始めます。これにより、業務内容とのミスマッチを減らすことを目指します。

さらに、適性や特性をもとに目標設定をサポートし、必要に応じて情報提供も行います。新たなキャリアをスタートさせた後も、従業員が新しい環境に適応できるよう、心のケアを行うことも重要な役割です。

各従業員の目指す進路は異なるため、最適な選択ができるように助言することがキャリアコンサルタントの主な仕事です。

<学校などの教育機関>

大学や専門学校などの教育機関では、就職支援や進路相談が主な業務となります。社会経験が乏しい学生にとって、自分のキャリアを具体的に想像するのは難しいことが多いため、学生の希望や適性に基づいて適した業種や職種を提案し、就職への橋渡しを行います。

さらに、履歴書やエントリーシートの添削など、応募書類に関するアドバイスを行うこともあります。

また、近年では進路指導室を設ける高校が増えており、こうした場でもキャリアコンサルタントは求められています。

<ハローワークなど公的な職業紹介所>

ハローワークはキャリアコンサルタントが活躍する代表的な場所です。ここでは、求職者が自分に最適なキャリアを築けるようサポートしていますが、その際にキャリアコンサルタントの役割が非常に重要です。

なお、ハローワークでは一般職業適性検査(GATB)、職業興味検査(VPI)、職業レディネス・テスト(VRT)、キャリアインサイトなどの各種適性検査を無料で受けることができます。これらの検査結果をもとに、求職者がどの分野に興味や適性を持っているかを特定し、その人に合った職業選びをサポートします。

<人材サービス会社>

キャリアコンサルタントは、人材紹介や人材派遣を行う企業でも活躍しています。人材紹介企業では、転職希望者の希望条件をヒアリングし、それに合った求人企業を紹介します。その際、転職希望者の適性やスキルを見極めたうえで、企業の求める人物像と照らし合わせてマッチングを行います。また、応募書類の添削や面接のアドバイスもしています。

人材派遣企業でも同様に、労働者と企業の間に立ち、適切なマッチングを行うことが主な業務です。

このほか、キャリア開発に関する講義やプレゼンテーションを行う機会もありますし、フリーのキャリアコンサルタントとして活躍することもできます。以前と比べて人々の離職率や転職回数が増えていることも影響し、キャリアコンサルタントの需要は年々高まり、活躍の場も広がっているのです。

資格があってもすぐには働けない?キャリアコンサルタントとして仕事を得るには

キャリアコンサルタントは、職業能力開発促進法に基づいて制定された厚生労働省認定の国家資格です。この資格を取得するには、指定の講習を受講するかキャリアコンサルティングの経験を積むなどしたうえで、学科試験と実技試験の両方に合格する必要があります。

国家資格であり、活躍の場が広く、社会的な需要が高まっていることから、キャリアコンサルタントは非常に人気のある資格です。しかし、「資格を取得してもすぐに仕事があるわけではない」「資格を取ったものの、仕事に活かせなかった」という声もあります。

実際、多くの資格と同様に、キャリアコンサルタントの資格を取得しても、経験がないとすぐに仕事を得るのは難しいという現実があります。では、この資格を仕事に結びつけるにはどうすれば良いのでしょうか。

ここでは、さまざまな仕事を経験し、現在は”研修講師兼キャリアコンサルタント”として活躍している三井あゆみさんのケースをご紹介します。

※リンク 「伝えるスキル」で研修講師、キャリアコンサルタントとして活躍-三井あゆみさんに聞く「自分の強みの活かし方」
<キャリアコンサルタント三井あゆみさんのケース>

キャリアコンサルタントの三井あゆみさんは、いくつかの仕事を経験した後、企業向けの研修講師をしていました。最初はビジネススキルを伝える研修が中心でしたが、ある時キャリアデザイン研修にサブの立場で参加し、キャリアデザインの重要性を強く実感したといいます。

そこから、「キャリアに関わる研修を担当したい」と考え、キャリアコンサルタントの資格を取得しました。

資格取得後、三井さんは講師の登録先で「キャリアコンサルタント資格の保有者で講師ができる人」の募集を見つけたり、就労支援の窓口で「空きが出たからやってみない?」と声をかけてもらったりして、少しずつ仕事を獲得していきました。

また、さまざまな勉強会や交流会に積極的に参加し、人脈を広げていきました。その際、自分ができることをアピールするなどの努力も欠かさず行い、その結果、仕事が人づてに次々入るようになったといいます。

さらに、これまでの研修講師としての「相手に合わせた伝えるスキルや、全体を捉えつつ個々にも目を向けてその場に合わせて柔軟に対応する調整力」を活かし、キャリアコンサルタントだけでなく、企業から委託を受けて、キャリアコンサルタントチームや講師チームを作り、統括的な立場でかかわるなどさまざまな仕事も引き受けています。

三井さんは、「これまでの経験やスキル、知識をキャリアコンサルタントの資格と掛け合わせ、自分の強みを作り出すこと」が仕事に繋がるカギだと話します。

彼女の場合、「話すスキル」を資格と掛け合わせて仕事を獲得し、キャリアコンサルタント以外の案件も受け入れることで活躍の場を広げています。

キャリアコンサルタントの資格だけでは仕事獲得につながらないことも多いかもしれませんが、自分の経験・知識・スキルを整理し、強みを明確にすることで、資格を効果的に活用できるのではないでしょうか。

フリーランスのキャリアコンサルタントがカウンセリング案件を得る4つの方法

キャリアコンサルタントには人前で話す仕事も含まれますが、ほかにも、代表的な業務の一つに「個別のキャリアカウンセリング」があります。では、フリーランスとして活動している場合、このような仕事はどのように獲得すればいいのでしょうか。三井さんによれば、キャリアカウンセリングの仕事を得るためには、主に以下の4つの方法があるそうです。

方法1:キャリアコンサルタントが任意で所属する団体に所属し、仕事やボランティア情報から応募する

有名で大規模な団体としては、以下の2つがあります。

①ACCN(一般財団法人オールキャリアコンサルタントネットワーク)

②JCDA(特定非営利活動法人日本キャリア開発協会)

また、その他の団体として、キャリアコンサルタントの更新講習を実施する団体や、その他講師やキャリアコンサルタントが所属する団体が数多く存在します。

これらの団体に所属すると、その団体が受託した案件の求人情報が登録会員に送られます。そこに応募することで、仕事を獲得できることがあります。

方法2:紹介

すでにその現場で働いている方からの紹介や、キャリアコンサルタント士のネットワークで「○○のキャリアコンサルタントを探している」と声がかかり、仕事獲得につながることがあります。

方法3:求人媒体から探す

求人情報(インディードや派遣の求人サイトなど)で探して応募する方もいます。

方法4:自身のホームページやSNSなどを活用し、キャリア面談を行っていることを発信して面談につなげる

フリーランスの場合、他の方法も取りながら、営業ツールとして自身のホームページやSNS運用を活用されている方も多いです。そこでキャリア面談を行っていることを告知し、面談の案件を得ることもあります。

キャリアコンサルタントとして再就職が目指せる業種は

キャリアコンサルタントの資格取得を、社内でのキャリアアップを目的に目指す人もいますが、資格取得を機に転職や再就職を試みる人もいるでしょう。しかし、「キャリアコンサルタントの資格を取っても再就職できる仕事はあまりない」という事情を耳にする人も多いはず。

キャリアコンサルタントの資格をもとに再就職を目指す場合、どのような業種で募集があるのか三井さんにうかがいました。三井さんによると、

  • 人材業界(コーディネーターやカウンセラー、営業)
  • 公共機関での相談員(ハローワーク、ジョブサポ、行政の就労支援機関など)
  • NPOなどの団体(若者やひきこもりなど事情を抱える方を支援する団体内キャリアコンサルタント
  • 学校内キャリアコンサルタント(キャリア教育や面談を取り入れる学校が増加、面談担当やキャリア講義など実施)
  • 大学内キャリアコンサルタント(大学内のキャリアセンターの職員)
  • 企業内キャリアコンサルタント(キャリア形成や人材開発、セルフ・キャリアドック制度など、人事や外部キャリアコンサルタント担当)

などの業種で募集があるようです。

ただし、「キャリアコンサルタント資格取得=再就職につながりやすい」というわけではなく、やはりそれだけでは厳しいという現実があります。

資格取得だけでは再就職が難しい要因としては、特に公共事業案件では、「〇〇でのキャリア面談経験〇年以上」、「就労支援セミナー講師経験〇年」などの条件があることが挙げられます。

また、公共案件でなくても経験や実績が重視されるため、資格だけ持っていても、再就職・フリーランスともに仕事を得るのは難しいようです。ただ、可能性がないわけではなく、「未経験でも可」の求人もありますし、これまでの経験を生かせればチャンスはあるということです。

しかし、「『チャンスはある』というのは、さまざまな面談現場、キャリアコンサルタントの採用にかかわってきた今の私だから言えます。が、資格取得後の私がまさに『国家資格を取得したのに仕事がない問題』に直面していました」と三井さん。

やはり、「キャリアコンサルタントの資格だけでは就職は難しい」と理解し、プラスアルファとなる自分自身の強みを持つことがキャリアコンサルタントとして活躍するには必須のようです。

キャリアコンサルタントの資格は人生経験が強みになる

キャリアコンサルタントは需要が高く人気のある資格ですが、実際に仕事に結びつけるのは簡単ではありません。しかし、これまでの人生経験が強みになりやすい点で、40代以降の方には有利な資格とも言えます。実際に、自分自身のキャリアに悩んだ末にキャリアコンサルタントの資格を取得した方も多いです。

キャリアコンサルタントの資格に興味がある方は、まず自分の強みを考え、それをどう活かせるかを検討してみると良いでしょう。