フリーランスの人や、会社員でも副業で一定以上の金額を稼ぐ人は、原則として自分で「確定申告」をする必要があります。中には、毎年確定申告で苦労する人もいるでしょう。また、自分で所得税の申告をした経験がない人にとっては、「とても大変そう」というイメージがあるかもしれません。実際のところ、確定申告はどのくらい大変な作業なのでしょうか。

そこで今回は、確定申告の経験があるキャリア・マム会員99名を対象に、確定申告に関するアンケート調査(※)を実施。確定申告で大変だった点やスムーズに終わらせるため工夫した点などを聞いてみました。

この記事でわかること

  • 帳簿記載は申告時期にまとめて行う人が半数以上
  • 確定申告を大変と感じる人、感じない人はほぼ半数ずつ
  • わからない点はインターネットで調べる人が8割
  • 確定申告の提出はe-Tax派が多い

これまでに経験した確定申告、約4割が「10回以上」

Q1. 現在の就業状況を教えてください。

    • 自営業者、個人事業主(フリーランス) 63%
    • 会社員等をしながら副業をしている 23%
    • その他 14%

まず、現在の就業状況についてたずねたところ、「自営業者、個人事業主(フリーランス)」が最も多く63%でした。「その他」には、パート社員や年金生活者、専業主婦、学生の方などがいらっしゃいました。

Q2. これまで確定申告を行った回数をご回答ください。

    • 1回 6%
    • 2回 7%
    • 3回 11%
    • 4回 7%
    • 5回 9%
    • 6回 9%
    • 7回 6%
    • 8回 4%
    • 9回 1%
    • 10回以上 39%

次に、これまでに行った確定申告の回数についてたずねると、「10回以上」が39%で圧倒的多数となりました。その他の回数にはバラつきがみられましたが、次に多かったのは「3回」の11%でした。

Q3. インボイス制度の適格請求書発行事業者番号を取得していますか。

    • はい 9%
    • いいえ 91%

続いて、インボイス制度にて「適格請求書発行事業者番号」を取得しているかどうかたずねたところ、「はい」と答えたのは回答者のうち9%でした。確定申告をしていても、適格請求書発行事業者になっている人は約1割にとどまり、少数派であることがわかります。

また、「はい」と答えた9%の現在の就業状況(Q2)を見ると、「自営業者・個人事業主(フリーランス)」が6%、「会社員等をしながら副業をしている」が3%でした。

Q4. 直近にて行った確定申告について、申告書の作成にどのくらいの時間がかかりましたか。

    • 30分未満 12%
    • 30分以上1時間未満 27%
    • 1時間以上3時間未満 32%
    • 3時間以上5時間未満 13%
    • 5時間以上 15%

申告書の作成にかかった時間についてたずねると、「1時間以上3時間未満」が最も多く32%でした。次いで、「30分以上1時間未満」が27%となっています。短時間で作成が完了している「30分未満」と答えた12%の確定申告の回数(Q3)を見たところ、これまでの回数に傾向はなくバラつきが見られました。確定申告の回数と、申告書作成にかかる時間には必ずしも関連はなさそうです。

Q5.帳簿記載、取引でやり取りをした書類保管はいつ行っていますか。

    • 発生都度行っている 26%
    • 定期(毎月、四半期等)で行っている 13%
    • 申告の時期にまとめて行っている 53%
    • その他 7%

帳簿記載や取引でやり取りした書類保管についてたずねると、「申告の時期にまとめて行っている」人が過半数を占めました。「発生都度行っている」と答えたのは26%、少し頻度が落ちて「定期(毎月、四半期等)で行っている」人は13%でした。

「その他」としては、「経費等の記載がなく、複数の支払調書の申告(のみ)」や「経理ソフトから情報を落とすので申告前にまとめて行う」などの回答がありました。

確定申告を大変だと感じた人、感じなかった人はほぼ半数ずつ

Q6. 帳簿はどのように作成していますか。

    • オンライン会計ツール、アプリを使用 32%
    • Excel等の表計算ソフトを使用 32%
    • ノートなど手書きで記載 26%
    • その他 9%

帳簿作成の方法についてたずねたところ、「オンライン会計ツール、アプリを使用」「Excel等の表計算ソフトを使用」がいずれも32%でした。また、「ノートなど手書きで記載」も26%と多くいました。

「その他」としては、「必要書類が少ないので(帳簿付けはせず)確定申告時に保管してあるものをまとめている」「帳簿は作成していない」「税理士に依頼している」などの回答がありました。

Q7. 確定申告は大変だと感じましたか。

    • 大変だと感じた 53%
    • 大変だと感じなかった 47%

次いで、確定申告が大変だと感じたかたずねたところ、「大変だと感じた」が53%、「大変だと感じなかった」が47%と両者にあまり差はありませんでした。

Q8-1.確定申告のどんなところが最も大変でしたか。

Q7にて「大変だと感じた」人に大変だと感じたポイントをたずねると、以下のような回答がありました。

    • 簿記の経験がないので、毎回やるべきことに慣れないまま申告している
    • 在宅ワークのため、水道光熱費の家事按分の比率の設定や、交際接待費の範囲の見極めなど
    • 相談できる相手がいなく、何が正解なのか分からないので困った。自分で調べて自分で解決する力が必要と感じた
    • 毎年e-Taxが変わるので、操作に戸惑うことがある。また、e-Taxの説明が長いので読むのに時間がかかる
    • 青色申告をしているので、複式用に勘定科目を付けるのが面倒

青色申告の複式簿記に戸惑う人や、e-Taxの操作方法、経費の勘定科目・範囲などで悩むという意見が多くみられました。

Q8-2. スムーズに確定申告を行うために工夫した点や利用したツールなどを教えてください。

確定申告をスムーズに終わらせるために工夫した点についてたずねると、

    • 前年の確定申告の控えを手元に置きながら確定申告書を作成した
    • 今までの書類を全部揃えてから、確定申告をした
    • パソコンでやるより携帯電話で申告したほうが早くできた
    • ある程度の予備知識と必要な書類を用意して、税務署の職員に相談する
    • 事前準備をしておく

などの回答がありました。また、利用したツールについては、「会計ソフト」が圧倒的に多く、「マイナンバーカード」「スマートフォン」という回答もありました。会計ソフトは前年度のデータを活用できる、経費のレシートの読み込みができるなど利便性が高く、作業効率が大幅にアップするとの意見が多く寄せられました。

Q9.直近年度の確定申告は青色申告と白色申告、どちらで行いましたか。

    • 青色申告 42%
    • 白色申告 58%

次に、申告の種類をたずねたところ、「青色申告」がやや少なく42%、「白色申告」が58%でした。

Q10-1. 青色申告を始めたのはいつからですか。

    • 開業1年目から 21%
    • 開業2~5年目から 11%
    • 開業6~10年目から 3%
    • それ以降 7%

Q9で「青色申告」と答えた人に青色申告を始めた時期をたずねると、半数の人が「開業1年目」からと回答しました。青色申告は手間がかかる分、節税メリットが大きいため、はじめからチャレンジする人が多いのかもしれません。

Q10-2. 白色申告で確定申告をしている理由を教えてください。

Q9で「白色申告」と答えた方にその理由をたずねたところ、「収入がそこまで多くないから」という理由が多く挙がりました。また、「青色申告は難しそう、わからない」「白色申告と青色申告の違いを知らない」との声もありました。

確定申告の提出方法は「e-Tax」が圧倒的に多い

Q11. 確定申告で失敗した経験はありますか。

    • はい 19%
    • いいえ 81%

確定申告で失敗した経験があるかたずねると、「はい」は19%と少数派でした。

Q12. どんな失敗をしましたか。具体的に教えてください。

Q11で「はい」と答えた人に失敗の内容をたずねると、以下のような回答がありました。

    • 入力ミスをして再提出した
    • マイナンバーカードのパスワードを何度も間違えて使えなくなり、(e-Taxとは)別の申請方法にした
    • 経費として計上すべきものを申請し忘れ、所得税が増えてしまい、児童扶養手当の受給額も減額された
    • もっと節税できる方法を後から知った。それを知らずに確定申告し、次年度の納税額が増えてしまった
    • 申告漏れがあった

入力ミスによる再申請のほか、経費の計上し忘れ、節税に有利な方法を知らなかったなどの失敗談がありました。特に、経費や控除になるものを把握しておらず、申告しきれなかったという人が目立っていました。

Q13. 確定申告について困ったことや分からないことがあった場合、どのように対応しましたか(複数選択可)。

    • 税務署に相談した 28%
    • 知人に相談した 15%
    • 税理士等専門家に相談した 11%
    • ネット等で自分で調べた 82%
    • 相談者がいない。分からないまま、申告した 9%
    • その他 8%

確定申告の際、困ったことや分からないことがあった場合の対応方法をたずねたところ、「ネット等で自分で調べた」という人が82%と大多数でした。また、税務署に相談した人も28%いました。

「その他」としては、「確定申告セミナー」や「市役所」、「会計ソフトのチャット」などの回答がありました。

Q14.「税務署に相談した」感想を具体的に教えてください。

Q13で「税務署に相談した」という人にその感想をうかがったところ、以下のような回答がありました。

    • こちらがある程度知識を持っていれば、丁寧で的確な指導をしていただける
    • いろんなところに回されて、誰もよく分かっていない。e-Tax専用窓口は丁寧なので直通でかけるのがおすすめ
    • 丁寧に優しく教えてくれ、勉強になった
    • 良い人に当たると的確にすぐ答えてくれるが、当たり外れが大きい印象
    • 税理士さんが電話対応しているようだが、出た人によって言うことが違うことがある

税務署に相談した人に多かったのは、「人によって言うことが違う」「優しい人もいればそうでない人もいる」といった意見。また、最低限の知識は調べたうえで相談しないと、相手の説明が理解できないこともあるようです。

Q15. 直近年度の確定申告の提出方法を教えてください。

    • e-Taxで提出 63%
    • 所轄税務署の受付や時間外収受箱へ提出 18%
    • 郵送で提出 15%
    • その他 4%

確定申告の提出方法をたずねたところ、e-Taxが63%と圧倒的多数でした。税務署に直接提出する人、郵送で提出する人は比較的少数となっています。

「その他」の人は、「市の相談所」や「確定申告会場」、「税理士」などとなっています。

Q16. 確定申告がもっと手軽にできたら、自営業者、個人事業主(フリーランス)としての仕事をもっと増やしたいと思いますか。

    • はい 27%
    • いいえ 14%
    • どちらともいえない 59%

確定申告がもっと手軽にできた場合、仕事を増やしたいかたずねたところ、「どちらともいえない」が59%で多数となりました。

Q17. Q16について、その理由を具体的に教えてください。

Q16の回答について理由をたずねたところ、「はい」と答えた人には以下のような回答がありました。

    • 特に1年目は確定申告の手順がよくわからず、とてもハードルが高く感じたから
    • 細かい作業が多いため
    • 青色申告をしたいがよくわからないまま期末を迎えてしまうため

「はい」と答えた人には、青色申告をしたくてもやり方がよくわからず、白色申告のままという人が目立ちました。青色申告がもっと手軽にできるなら、その分仕事を増やしたい人も多いようです。

一方、「いいえ」と答えた人には、以下のような回答がありました。

    • 仕事量と確定申告の手間は関係がない
    • 扶養の範囲内で働いているため、これ以上仕事量は増やせない
    • 手軽にできても、税金が増えたら仕事を増やす意味がない
    • 確定申告は面倒ではない

「いいえ」と答えた人には、「仕事量と確定申告の手間は関係ない」という意見が多くみられました。仕事量にかかわらず、確定申告に対してどう感じるかは人それぞれなのかもしれません。また、「どちらともいえない」と答えた人からも同様に、仕事量と確定申告の手間は無関係との指摘が多くありました。

Q18.確定申告について、どのようなサポートがあるとよいと思いますか(複数選択可)。

    • 書類作成代行サービス 21%
    • 書類作成セミナー 33%
    • 個別相談窓口 38%
    • グループ相談会 10%
    • 必要ない 27%
    • その他 11%

確定申告について希望するサポートをたずねたところ、「個別相談窓口」や「書類作成セミナー」と回答する人が多くみられました。一方、「必要ない」と答える人も27%いました。

「その他」としては、「チャットによる相談」「オンラインで相談」などの回答がありました。

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※調査概要
対象者:確定申告の経験があるキャリア・マム会員
集計対象者:99名
(結果の%数値は小数点以下第1位を四捨五入)
調査手法:キャリア・マムにてアンケート回答者を募集
調査期間:2024年7月17日~25日
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