育児や介護に追われる日々を送っていると、働きたい気持ちはあっても、仕事探しをあきらめてしまう人は少なくないでしょう。そのような中でも、「無理のない働き方」を模索しながら、実際に仕事と家庭を両立させているのが、オカモトユミコさんです。

今回は、子育てと介護の合間に、限られた時間をどう活用し、どのように仕事を見つけて収入につなげているのか、その工夫や実践について詳しくうかがいました。

育児と介護に加えて、隙間時間で自分が活躍できる場を探す

━━育児と介護の合間に、いろいろな仕事をされているのですね。それぞれの仕事の内容を教えてください。

現在は、主に4種類の仕事をしています。1つめは、イベントの託児スタッフです。在宅ワークのセミナーや保育園の説明会などに参加するお母さん方のお子さんを、別室でお預かりする仕事です。絵本の読み聞かせや折り紙などで遊ぶこともあります。2つめは、ポスティングの仕事です。自宅に届いたチラシを折ったりセットしたりして、カバンに詰めて配布しています。3つめは、コインランドリーの清掃で、週に1回、自分の都合のよい時間に行っています。4つ目は、ライティングの仕事です。2025年7月に開業届を提出し、個人事業主として活動を始めました。

これらの日常的な仕事のほかに、在宅ワークでのデータ入力や隙間バイトアプリを活用して、介護や保育、投票所のスタッフ、飲食店の洗い場など、単発の仕事もしています。

━━それらの仕事を選んだ理由を教えていただけますか。

最初に始めた仕事は、コインランドリーの清掃です。私には子どもが2人いて、子育てのために仕事を辞めていましたが、下の子が3歳になったころ「そろそろ働きたいな」と思うようになりました。ちょうどそのとき、地域の情報サイトで、新しくオープンするコインランドリーの清掃スタッフの募集を見つけました。労働時間が短く、勤務先も近所だったので「これくらいならできそう」と思い、働き始めたんです。

その後、下の子が幼稚園に入園し、仕事に充てられる時間が少し増えたので、「もっと働けるかもしれない」と思ったのですが、平日の昼間は夫の介護にも関わるようになりました。それでも、「自分にもできることがある」「社会とつながっていたい」という気持ちが強く、会社勤めではなく、時間の融通が利く働き方を探すようになったのです。コインランドリーの仕事に加えて、隙間時間にできるポスティングも始めるなど、自由度の高い働き方を求める中で、現在のスタイルが出来上がっていきました。

収入の安定は必要でも、今の私が選んだのは「無理のなさ」

━━どのようにして、隙間バイトを探すのですか。

サイトで探すこともありますが、 自宅のポストに入っていたチラシや近所の方から紹介してもらうケースのほうが多いですね。子育てや介護があるため、できるだけ家の近くで働ける仕事を探しているので、アナログな方法のほうが見つけやすいと感じています。ポスティングの仕事は、ポストに入っていたチラシをきっかけに始めました。

━━そうでしたか。では次に、収入面についておうかがいします。お仕事の稼働時間と1カ月の収入を教えていただけますか。

託児の仕事は、少ない時は月に5時間で約5,000円、多い時には5万円ほどになります。コインランドリーの清掃は週1回、1時間ほどで、月額で約5,000円です。ポスティングは、週2回行っていますが、今年に入ってからチラシの量が減り、収入は月に1万円~2万円弱です。在宅の仕事は、多い時は月4万円、普段は5,000円前後です。その他の仕事の収入は、2~3万円の場合もあれば、ゼロの月もあります。

朝から夕方まで働いたり、午前中で仕事が終わったりと、稼働時間や収入にばらつきはありますが、平均すると、稼働時間は1日に4、5時間ほど、収入は月に6万円くらいです。

━━現在の収入になるまでの期間や経緯を教えてください。収入を上げるにあたって、何か自分なりに工夫したことはありますか。

隙間時間に動ける仕事を複数組み合わせて働くスタイルにしたことです。
ただ、比較的単価が低めの案件が重なると、どうしても作業にかかる時間とのバランスが難しく感じることもあります。

例えば、在宅ワークでは、仕事そのものよりも、作業のための情報収集や連絡のやりとりに多くの時間を取られてしまい、ほかの仕事に手をつけられないことがありました。気持ちにも余裕がなくなり、時給に換算すると見合わないと感じた案件は、継続を見送ったケースもあります。報酬が同じでも、時間に余裕のある仕事を選んだことで、今後の働き方や収入を増やすための学習にも意識が向けられるようになったのです。

もちろん、仕事はやってみなければわからない部分も多いです。作業を続けているうちに、「スキルや対応力が上がっているな」と実感することもあります。

━━仕事で必要なスキルは、どのようにして身につけましたか。

ライターの仕事については、図書館でライティング関連の本を借りて学んだり、さまざまな方のブログを読んで文章の書き方を参考にしたり、募集案件を確認して必要なスキルを調べたりしています。

保育士の資格は、託児の仕事を始める前に「いつか保育の仕事をしたい」と思い、独学で取得していました。書店で、過去問題集とテキストを購入し、筆記試験と実技試験を受験しました。

現在ならば、アプリを使ってクイズ形式で問題を繰り返し解く方法も有効だと思います。

━━独学でスキルを磨いているのですね。では、1日のスケジュールを教えていただけますか。

日によって違いがありますが、子どもが夏休み中のある日を例に挙げます。

この日は納期が迫った添削の在宅ワークがあり、朝4時に起きて6時まで作業しました。6時半からは子どもたちとラジオ体操に参加し、そのまま7時半まで公園で遊びました。

帰宅後に朝食をとり、8時から9時まではチラシ配り。9時から9時半までは再び在宅ワークをこなし、その後、子どもたちを実家の母に預け、10時から11時までインタビューを受けました。

午後は子どもの用事で外出し、17時頃帰宅して夕食の支度を済ませた後、18時から30分ほどチラシを配りました。パソコン作業が立て込んでいる時には夜12時頃まで作業することもありますが、普段は夜9時頃には子どもと一緒に寝ています。

こうして、自分の生活リズムや家庭の状況に合わせて、隙間時間を組み合わせながら働いています。忙しくはありますが、その分一日をやりきった充実感があり、「今日も頑張れた」と思える瞬間が励みになっています。

日々の小さな経験が、これからの自分の働き方を形づくる

━━何に仕事のやりがいや楽しさを感じますか。逆に、大変だと思うのは、どういったところでしょうか。

さまざまな仕事を経験する中で、いろいろな人と交流できることにやりがいを感じています。1つの職場にとどまらず、複数の現場で働いているため、多様な価値観や考え方に触れることができますし、託児の仕事ではお母さんたちやお子さんたちと直接関わる時間がとても楽しいです。

また、単発の仕事や複数の介護施設・保育園で働く機会があるのも、自分にとってプラスだと感じています。将来、フルタイムで働く機会がある際には、職場選びの参考にもなると思っています。

一方で大変なのは、 コミュニケーションがとりにくい点ですね。コインランドリーやポスティングは、一人で行う仕事なので、ちょっとした確認でも、電話をしなくてはならず、申し訳ない気持ちになることもあります。在宅ワークでは、仕様書に書かれていないケースが発生したときに、電話やメールで問い合わせても、担当者が不在だったり、返答まで時間がかかったりして、仕事がスムーズに進まないことがありました。

でも、そうした小さな課題をひとつずつ乗り越えてきた経験が、自分の力になっていると感じています。

━━今後の目標は何かありますか。

ライターの仕事を本格的に続けていきたいと思っています。学生時代は、作文やレポートを書くことが嫌いではなく、むしろ文章もすぐに浮かぶほうでしたが、実際にライティングの仕事を受けてみると、思うように書けずに戸惑いました。言葉の言い回しや漢字の使い方、同音異義語など、 注意するポイントが多く、時間をかけてもなかなか書けずにいます。

それでも、夫の介護と子育てを両立する生活の中で、在宅でできるライティングの仕事はありがたい存在です。だからこそ今後は、より質の高い記事を書けるように学びを深め、ライターとしてのスキルを磨いていきたいと思っています。そして、少しずつでも報酬の面でもステップアップしていけたらと考えています。

━━最後に、隙間バイトで収入をアップしたいと考えている方に向けて、アドバイスをお願いします。

ひとつは、誰でもできる仕事よりも、自分の強みになるスキルを身につけることや資格を取得して、より時給の高い仕事を目指すことだと思います。どんな資格でもいいというわけではなく、需要のあるものを選ぶことが大切です。私の場合は、保育士と介護士であれば求人はあるはずだと思い、この2つの資格を取りました。保育士の資格を持っていたため、託児の仕事では時給が少し高くなりました。今は、資格取得を支援する制度も多くあるので、それらを活用するのもおすすめです。

それから、実際に働いて気づいたことがあります。私は地方に住んでいますが、雇用主が東京の企業あれば、報酬も東京の水準で支払われるケースがあります。逆に、本社が東京でも地方に支社がある場合は、その地域の基準が適用されることもあります。そのため、自分が住む地域よりも高い時給で働ける企業を選ぶという視点も、選択肢のひとつとして持っておくとよいと思います。

なぜなら、同じ時間を使うのであれば、より良い条件で働いたほうが、自分の生活にも余裕が生まれるからです。

無理のない範囲で、できることから少しずつ挑戦してみてください。きっと自分に合う働き方が見つかります。