キャリアデザインを通じ、その人が望む生き方を実現できるようサポートする「キャリアコンサルタント」(以下、キャリコン)。「難関資格」というイメージが強いキャリコンですが、実際の働き方や仕事を得る方法などが気になる人も多いでしょう。そこで今回は、キャリコンとして活躍する三井あゆみさんに、キャリコンになるまでの道のりや仕事の獲得方法、そして「自分の強み」の活かし方についてお話をうかがいました。

  • ひとり親として2人の子どもを育てる
  • パソコンのテクニカルサポートなどの仕事を経て企業向けの研修講師に
  • 研修講師を続けながらキャリアコンサルタントとして活躍中

キャリアデザインに感銘を受け、キャリコンを目指す

━━はじめに、三井さんのこれまでのキャリアについて教えてください。

20代半ばまでは社交ダンスのプロの競技選手を目指していて、そこから社会人デビューし、最初に就いたのはパソコンのテクニカルサポートの仕事でした。

そこで、一人ひとりのお客様に対して電話で操作方法をご案内していく仕事に携わっているうちに、今は「個」に対応しているけれど、伝える対象が「多」になったらどう伝えればいいのだろうと興味を持ったんです。そこから、研修会社に就職し、社員として研修講師やお客様に研修を提案する提案営業という仕事を経験してきました。

その後、妊娠を機に正社員の仕事を辞め、2人の子どもが0歳と2歳の時にコールセンターでアルバイトをしました。しかし、子育てとの両立が大変で、働き方をフリーランスに変え、企業向けの研修講師に復帰しました。

企業研修の様子

━━その後、どのような経緯でキャリコンの資格を取得されたのでしょうか。

企業向けの研修講師をしている時は、ビジネススキルを伝える研修ばかり担当していました。しかしある時、キャリアデザイン研修にサブとして入ったことがあり、「キャリア研修はスキルを習得しない研修なのに、習得するものが多い研修で、仕事も含めた人生に向き合う内容」と知り、感銘を受けたんです。

ビジネススキルも大事だけれど、私もキャリアに関わるような研修に登壇したいと考えるようになり、それがきっかけでキャリコンの資格を取得しました。

━━キャリコンは国家資格ですが、資格を取得されるまでは、かなり大変でしたか。

大変でしたね。キャリコンには養成講座があり、まずはそちらに3ヶ月くらい通い勉強をしました。しかしその頃、子どもたちがまだ未就学児で、養成講座に通いながら子育てや仕事、家事をする日々でしたので、復習や予習をする時間がなかなか取れませんでした。

養成講座を卒業した後、国家試験を受けましたが、2度不合格になって諦めてしまった時期もあります。仲間はみんな1回で合格しているので、置いて行かれたような気持ちになり辛かったです。

━━その後、無事キャリコンに合格されたということですが、資格取得後はどのようにして仕事につなげていったのでしょうか。

キャリコンは国家資格ですが、資格があっても経験がないと仕事獲得が難しいです。私の場合、講師として取引があった先で、「キャリコン資格を持っていて講師ができる人」の募集を見つけたり、就労支援の窓口で「空きが出たからやってみない?」と声をかけていただいたりしたのが最初のきっかけでした。

私の場合、「キャリコンで講師ができる人」のニーズがすごくあったため、講師としての経験が活きて、キャリコンの仕事が一気に広がったという感じですね。

さらに、2021年には『キャリアコンサルタントの歩み方』(Amazon販売中)という本をキャリコン仲間5人と共著し、その中で私は、離婚前後の女性支援について執筆しました。これをきっかけに、女性やひとり親支援の仕事も増えました。

キャリコン仲間5人との共著『キャリアコンサルタントの歩み方』

伝えるスキルは「ポータブルスキル」と気づき、仕事の幅が広がった

━━三井さんはキャリコン以外にも仕事をされているそうですが、どのような内容なのでしょうか。

元々やっていた企業研修講師の仕事もしています。これが最も単価が大きく、一番の収入源になっていますね。あとは、東京都の就労支援事業を受託している企業でキャリコン統括として、キャリコンチームの取りまとめや講座や面談を担当しています。また、中学から大学までのセミナー講師、自治体向けのセミナー講師ですね。ほかに、業務委託案件を受託してチームで仕事をしたり、最近ではキャリコンとしてWEBメディア向けの執筆をしたりもしています。

フリーになり、企業研修の講師を再開した時に、「教える、伝える」というスキルは、何も企業の研修講師だけに求められるわけではないと気づきました。

それから、「講師ができる人」を求めるさまざま現場からお声がけいただき、シニア向けセミナーやキッズ向けイベントでの講師などもやらせていただきました。

私が培ってきた伝えるスキルは「ポータブルスキル」なんだと気づいてからは、企業研修講師にこだわって仕事を待つより、ポータブルスキルを強みとして活用してもっと色々なところで活躍できるのではと視野が広がり、少しずつ仕事が広がっていきましたね。

キャリア・マム主催 キャリアデザインセミナーの様子

━━現在、1日や1週間にどのくらい稼働されていますか。また、収入についても教えていただけますか。

稼働時間は日によって全く違いますが、たとえばキャリア面談が入っている日なら、面談が1回につき30~60分で、それが人数分かかります。研修やセミナーの登壇が入っていれば一日仕事になり、短いものだと2~3時間、長いものだと6~7時間かかります。これらの仕事が特にない日は、主に事務仕事を3~5時間程度しています。

私自身、ひとり親として2人の子どもを育てていますので、フリーランスになった時に「土日は仕事をしない」と決めましたが、最近は子どもたちが大きくなってきて、少しずつ土日の仕事も受けられるようになっていますね。

キャリコン以外の仕事もありますが、キャリコンとしての収入は月10万円から多くて30、40万円くらいで、月によってかなり変動します。2019年にキャリコンの資格を取り、現在のような収入になるまでには3年くらいかかりました。

お仕事中の風景

━━では、1日のタイムスケジュールを教えてください。

6時台に起床し、子どもたちを8時前に送り出します。そこから少し家事をして、仕事を開始するのが8時半頃ですね。面談が入っていれば面談対応をしますが、研修が入っている場合、朝早くから家を出ます。残りの時間は主に研修を作ったり、面談の記録を書いたり、それ以外の事務仕事をしたりしています。

その日の業務内容にもよりますが、いったん仕事が落ち着くのは15時頃で、子どもたちが帰ってくる時間帯はなるべく仕事を入れないようにしています。

その後、家事をしながら、面談や打ち合わせがあればそれらを行います。夕飯を19時に済ませ、夜の時間は、翌日の準備や登壇などその先の仕事の準備をすることもありますし、研修を作る時や新しいテーマで仕事をする時は、その時間に勉強しています。子どもたちを9時台に寝かしつけて、自分は23時くらいに就寝しています。頑張るばかりではなく、趣味の時間や休息を入れることや、良い睡眠を取ることも重要と考えています。

 

 

「経験やスキル、知識×キャリコン資格」が強みになる

━━キャリコンの楽しさややりがいは、どのような点で感じますか。

キャリア面談も研修の仕事も、毎回違う気づきがあるというところです。多くの人の価値観や働き方、生き方に出会えることで、新しいことが学べるところもやりがいです。

また、継続した学びが必要な仕事なのでそういう面は大変ですが、新しいことを吸収する楽しさもあります。たとえば、キャリコンは5年ごとに資格の更新がありますので、そのために私のかかわる業務に必要な講習を受けたり、興味関心のある分野や新しい研修テーマ開発のための学びを深めたりしています。

お仕事道具のパソコンやノート

━━それでは、仕事で特に大変に感じることは何でしょうか。

同じお悩みを持っていても、その方の背景や考えていること、置かれている状況は一人ひとり違いますので、それらを想像し理解したりして、より適切な対応につなげる大変さがあります。

それに、私は「転機の後の新しいステージが、光(LUX)の当たるものになりますように」をモットーに、キャリコンの仕事をしています。しかし、どんなに頑張ってもキャリアカウンセリングは万能ではないと感じる時があり、お力になれないことや、担当が私じゃなければこの方にとっていい未来につながったのではと考えるときもありますね。

また、私自身ひとり親ですので、一家の大黒柱、世帯主として仕事を獲得して収入を得ていかなければならないところも大変さを感じます。フリーで働くのは好きな仕事ができて自由度が高いですが、それだけでは生活が成り立たないので、仕事を選んでばかりもいられません。

実績を積んだり、専門性を深めたりして報酬を上げる努力をしたり、継続的な収入やその先につながる仕事を戦略的に選んでいくことをここ数年は意識しています。

行政セミナーの様子

━━最後に、今後の展望や目標があれば教えてください。また、キャリコンの仕事に興味を持っている方に向けてアドバイスをお願いします。

今後は法人化して、仲間を増やして、一人ではできない大きな仕事を獲得して成果につなげたいです。近いうちに法人化して事業を拡げていきたいと考えています。

キャリコンに興味を持たれているなら、これまでご自身が経験してきたことや培ってきたスキル、知識と、キャリコンの資格を掛け合わせ、その方ならではの強みを作って仕事につなげていかれるといいと思います。

キャリコンの資格を取ってフリーになっても、そのままでは仕事は来ません。ですので、もしフリーで仕事をすることを考えるなら、キャリコン資格を取得してから何をしたいのか、何ができるのかを周りに発信するのは大事です。

実際、キャリコンの仕事は、どこかに登録して仕事を待つか、もしくは周りの仲間からの紹介がすごく多いんです。普段からそういう仲間ができるような学びの場、交流の場に積極的に行き、自分が何をしてきて何をしたいのかを積極的に発信すると、声がかかる確率が高まるでしょう。

多くの人とのつながりの中で仕事を得ることが多いですが、私が最も大事にしているのは、「信頼を積み重ねること」です。仕事で求められる以上の結果を提供することや、良好な人間関係を構築することを、常に心掛けています。

※インタビュー実施日:2024年5月17日